[Apex]toon emotions[短編]

veil of darkness 2[ブラッドハウンド] ページ46

「A、あなたパーティは誰と行く予定なの？」
「え……と、一人なんだけど」
「ええ！もったいない！」

せっかくこんなにおしゃれしていくのよ？なんてワットソンは不満げに口を尖らせた。私だってそれは何十回と考えていた事だが、私が一番気になっているあの人は、こういった催し物には参加しないだろうし。だからといって他の誰かを誘う気も起こらない。そんなこんなで私は独り身の何とも寂しい参加者なってしまった。ワットソンもレイスも、もう一緒に行く人はいるだろうし、正真正銘私だけがひとりぼっちということになっている。

「それって……もしかしてすごく恥ずかしいんじゃ……」
「A、んん……残念ね。でも会場に入ったら一人なんかじゃないわよ？私真っ先にあなたのところへ向かうわ！」

ワットソンの言葉に私は苦笑いを返す。自分が何だか酷く場違いなようにも思えてきて、憂鬱な面持ちでその日は帰宅した。

「ど、どうしようかな」

そして、当日。昨日のうちに決めていた覚悟は会場の入り口で崩れ落ちた。煌びやかなドレスとは釣り合わない上に私は独り身、さらに追い討ちを掛けるように仲間たちはペアでの参加がほとんどだった。一人で受付までの階段を上るのがこんなに億劫だとは。それでもとりあえずは中に入らなくてはならない。いつまでも寒空の下突っ立っていてはそれこそ異質だ。私は意を決して最初の一歩目を踏み出そうとした。

「美しいひと。そう、あなただ」

背後から聞こえてきた声に驚く。……だってあの人はこんな騒がしい場所に顔を出すような人じゃないから。それでも気になって振り向くとそこには、いつもの戦闘服を取り払いドレスコードに身を包んだブラッドハウンドがいた。

「お相手は？」
「その質問は意地悪ですよ……ブラッドハウンド、参加してらしたんですか」
「相応しくないと断っていたが、オクタビオに全て準備されてしまった。そこまでされたのであれば参加しなくては気が引ける」

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