like a knife 3[ブラッドハウンド] ページ41
言い分を並べようと捲し立てた時だった。いつの間にかガスマスクを取り外して首からぶら下げていたブラッドハウンドが力を込めた手を私ごと引き寄せてそれに……噛み付いた。
「は……ほらA、何か言いたいことがあるんだろう?」
「い、いたい、いたいです!」
私の人差し指は第一関節まですっかりこの人の口の中だ。時折、舌先が爪を掠めてびくりと震える。このままだと噛み千切られそうで、私は反対の腕でこの人を叩くがビクともしない。それどころか、そちらの腕も見事に掴まれてぐい、と身体が近付く。胸と胸がくっつくような距離で、指を咥えたままのブラッドハウンドがゴーグル越しの視線をこちらに送った。私はもう何も言えなくなってしまい、それから逃げるように目線を下げた。
「う……」
ようやく離された人差し指には、赤い歯形がくっきりと刻まれている。柔い舌でなぞられたそこは、空気に触れると熱く痛んだ。
「……痛かったか」
「……わ、わかっててやってるんですか」
濡れた唇が私に話しかける。歯先から覗いて見えた赤い舌に目がいきそうになってしまい、ぶわっと顔に血が集まるのを感じた。
「今、この瞬間……あなたの全てを私が独占しているな」
薄く弧を描く口元は今にも、私に食らいつこうとしていた。駄目だ、これ以上は私の心臓が保たない。咄嗟に両手をこの人の口に当てて塞ぐ。2秒ほど固まったブラッドハウンドだったが、すぐに不満そうにぐいぐいと圧を掛けてきた。
「心外だな、あの男には警戒しなかっただろう」
「あ、あなたは!いつも突然だから」
そう言うとふむ、と少し考える仕草をしてこの人は私から離れた。
「……ならば伝えようか、私を見てA。今からあなたに口付けをする」
「ええ!?」
驚いた拍子に口を開けたのがいけなかった。言おうとしていた文句は全て吸い込まれてしまう。ぐ、ぐ、と段々体重をこちらに掛けてくるブラッドハウンドに抵抗が出来ず、そのまま背後にあるこの人のベッドに倒れ込んだ。私は半ば押し倒されたような状況をどう打開しようか、誰か来はしないか、不安要素ばかりを胸に募らせていた。
…
「あの宗教家も、訳の分からねえことばかり説きやがると思ってたけどよ。なんだ、人間らしいとこもあんじゃねえか。まあ良い女が既に手付きだったてのは俺の見込み違いでもあるなあ、ははは!」
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オーキッド(プロフ) - 最高に面白くかつ文才あふれる読みやすい小説でした。ブラハ沼に見事に落とされました。ファンとして続きを楽しみにしております。 (2021年8月19日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
名無し70039号(プロフ) - ブラハの小説ってすんごいレアだと思うので素敵な作品に出会えて私感激…胸キュンが止まりません!!!!!更新楽しみにしてます!! (2021年6月18日 10時) (レス) id: 6045cd7502 (このIDを非表示/違反報告)
椿麒麟(プロフ) - 体が痺れるぐらいとても素敵なものを読ませていただきました!更新楽しみにしております! (2021年6月1日 7時) (レス) id: 5450775e17 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - ブラハが好きで楽しくきゅんきゅんしながら拝読させていただきました。とても幸せです(*'-'*)更新楽しみにしております! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 27e019c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
たろう - 3ヶ月程前に見つけまして密かに読ませて頂いておりました。ブラハ大好きなので見つけた時は嬉しくて…読んでみたら私の中のブラハのイメージそのもの!ドキドキしながら何度も読ませて貰っています!お忙しいと思いますが続き楽しみにしています(*´`) (2021年5月23日 20時) (レス) id: b492fc9660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無し者 | 作成日時:2021年1月5日 22時