It’s so obvious[ブラッドハウンド] ページ36
戦場に、獣の雄叫びが響く。私のいた部隊は三方向から挟まれ既に壊滅状態だった。銃弾の中を走り抜けて仲間のバナーを手にしたは良いものの、まだ距離があるリスポーンビーコンまで行くにはさらに敵地を突っ切っていかなくてはならない。そんな時に聞こえてきた雄叫び、私は内心死を覚悟した。ハンティングビースト、敵であるブラッドハウンドのアルティメットアビリティか発動したのだ。足音はまだ遠い。しかし私が追われるのは時間の問題だろう。私が逃げてきたエステートには2部隊も3部隊も残存していたのだから。
「行かなくちゃ……」
こうしてこの場にいても、状況は何も変わりっこない。注射器、シールドセルだって残り僅かだが、動かない限り手に入ることはないのだ。私は駆け足でシグナルの示すリスポーンビーコンへと向かう。もうヤケになるしかない、そう心の何処かで割り切ってもいた。
「……っ」
戦地を走り抜ける。どうかバレないでほしいとずっと願っていた。坂道を下った先にリスポーンビーコンのライム色のライトが光っている。間に合う。間に合う筈だ。私は息をするのも忘れてビーコン横に設置されたサプライボックスの影に滑り込む。まさにその一瞬のことだった。
「う!」
撃たれた、背中だ。リスポーンが間に合わない。私は武器を構えて敵の様子を窺った。運良くアーマーのお陰で胴体にダメージは無い。だが回復だってほとんど持っていない状態で複数人に距離を詰められればどうしたって負けてしまう。そろりと撃たれた方向を確認すると相手も一人だということがわかった。けれどそれは。
「ブラッド、ハウンド……」
よりにもよってあの人か。一騎打ちならもしかすれば、と湧いてきた希望を砕かれた気分だ。純粋な撃ち合い、こちらは間違いなく劣勢。逃げるが吉だがあの人以外に敵の姿は見えず、他のリスポーンビーコンまでは距離がある。ブラッドハウンドを倒し、この場で仲間を復活させるのが英断だ。一瞬見えたゴーグルからは赤い光が漏れていた。ハンティングビースト、けれどそれだって無限ではない。もう、終わったはず。サプライボックスを盾にブラッドハウンドへと照準を合わせた。
「いない、どうして……」
先程までこちらに向かって来ていたあの人の姿は既に無い。何処に行ったのか、あの岩陰か。銃口を左右に振りつつ探すもいない。私に気付いていなかったのだろうか、まさかそんな筈は。前に目をやり過ぎていた私は背後の足音に振り向けなかった。
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オーキッド(プロフ) - 最高に面白くかつ文才あふれる読みやすい小説でした。ブラハ沼に見事に落とされました。ファンとして続きを楽しみにしております。 (2021年8月19日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
名無し70039号(プロフ) - ブラハの小説ってすんごいレアだと思うので素敵な作品に出会えて私感激…胸キュンが止まりません!!!!!更新楽しみにしてます!! (2021年6月18日 10時) (レス) id: 6045cd7502 (このIDを非表示/違反報告)
椿麒麟(プロフ) - 体が痺れるぐらいとても素敵なものを読ませていただきました!更新楽しみにしております! (2021年6月1日 7時) (レス) id: 5450775e17 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - ブラハが好きで楽しくきゅんきゅんしながら拝読させていただきました。とても幸せです(*'-'*)更新楽しみにしております! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 27e019c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
たろう - 3ヶ月程前に見つけまして密かに読ませて頂いておりました。ブラハ大好きなので見つけた時は嬉しくて…読んでみたら私の中のブラハのイメージそのもの!ドキドキしながら何度も読ませて貰っています!お忙しいと思いますが続き楽しみにしています(*´`) (2021年5月23日 20時) (レス) id: b492fc9660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無し者 | 作成日時:2021年1月5日 22時