crow knows 3[ブラッドハウンド] ページ30
「あ、あの……」
「気分の良いものだな、こうしてあなたを囲えるというのは。ふふ、あなたは兎のように跳ね回るから。いつ捕まえられるのか私も思案していた」
でも、もう逃げられないだろう?と呟く。私は、期待していた以上の状況に頭が付いていかず、何も言えなくなってしまっていた。もしかしたら一番期待していたのはこの人なのかもしれない、とも思う。どちらにせよ、私は今、ブラッドハウンドに何を話したら良いのかさっぱりわからない状態だった。
「本当は、Aが私の傍から離れないのであれば、それで良いと思っていたが……どうやらそう簡単なものでもないらしいな」
この人の口がゆるく弧を描く。自虐的に笑うブラッドハウンドは、憂いたような瞳で私を見つめるとその指を私の顔に滑らせた。あ、と思ったその時に頭上でカア!と聞き慣れた鳴き声が聞こえた。
「わ!」
「アルトゥル!離れなさい」
私とブラッドハウンドを繋ぐ僅かな空間に真っ黒いかたまりが飛び込んできた。喉から空気が押し出されてぐえ、とおかしな声が出る。アルトゥルは羽根をばたつかせながら、私の上を歩き回っている。それをどうにか捕まえたブラッドハウンドは彼を落ち着かせるべく、テーブル横に置かれた鳥籠に入れた。アルトゥルは心配そうにじい、とこちらを見ている。彼の言葉は流石にわからないので、私は気まずくなりながらもあはは、と曖昧に笑った。
「……アルトゥル、私がAを捕食しているようにでも見えたのか」
「ほ……!」
「食べたりしない、安心しろ。手荒なことをするつもりは無いから」
ブラッドハウンドは彼と意思疎通が出来るのかペラペラと話しかけている。その中には私にとって聞き捨てならないものも、いくつかあったのだが。何とか今日は無事に帰れそうだ、私はテーブルに置かれたままのすっかり冷め切ったコーヒーを啜りながらブラッドハウンド達の様子を見守った。
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オーキッド(プロフ) - 最高に面白くかつ文才あふれる読みやすい小説でした。ブラハ沼に見事に落とされました。ファンとして続きを楽しみにしております。 (2021年8月19日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
名無し70039号(プロフ) - ブラハの小説ってすんごいレアだと思うので素敵な作品に出会えて私感激…胸キュンが止まりません!!!!!更新楽しみにしてます!! (2021年6月18日 10時) (レス) id: 6045cd7502 (このIDを非表示/違反報告)
椿麒麟(プロフ) - 体が痺れるぐらいとても素敵なものを読ませていただきました!更新楽しみにしております! (2021年6月1日 7時) (レス) id: 5450775e17 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - ブラハが好きで楽しくきゅんきゅんしながら拝読させていただきました。とても幸せです(*'-'*)更新楽しみにしております! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 27e019c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
たろう - 3ヶ月程前に見つけまして密かに読ませて頂いておりました。ブラハ大好きなので見つけた時は嬉しくて…読んでみたら私の中のブラハのイメージそのもの!ドキドキしながら何度も読ませて貰っています!お忙しいと思いますが続き楽しみにしています(*´`) (2021年5月23日 20時) (レス) id: b492fc9660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無し者 | 作成日時:2021年1月5日 22時