reasonably 3[ブラッドハウンド] ページ22
ぐっと押し黙ってしまった。ブラッドハウンドは大股でこちらに近付く。そのままこの人は私が座るソファに倒れ込んだ。両横にはこの人の腕があって身動きが取れない。ブラッドハウンドはソファに片膝を乗せて私を真正面から囲っていた。
「あの」
「神々は平等な戦いを望んでいる、それはあなたにもわかるだろうが。私は……あなたが数多の戦士達と仲間の契りを交わす度に、どうにもたまらない気持ちになる」
「……」
「あなたの日々の成長に至っては、私ただ一人が知っていれば良いとさえ感じている。……くだらない独占欲だ。こんな気持ちのまま、あなたと戦地に立って良いわけがない」
どうか、忘れてくれと。この人は言った。言葉とは裏腹に、この人の声音はひどく悲痛で私は掛けるべき言葉を探した。あなたにそんな風に思われて嬉しくないはずがないんです、と。そう告げようとした時。
「A」
「は、はい」
「嫌だ、と……そう感じたならば、殴り飛ばしてでも逃げて」
言うと同時にブラッドハウンドはガスマスクを外す。何度か見たことのある素顔だが、今は別人のように強張っていた。縦に走るかつての凍傷痕が照明に照らされて、さらに赤く目立っている。えも言えずに見惚れていると、この人は私の肩に手を添えると、身をぐっと乗り出した。あと数cmで互いの口がぶつかる時に吐息のようにこの人は告げる。
「……逃げないのか」
こちらが何か言う前にそれは重なった。
「う、ブラッド、ハウンド……あの」
「……ん、駄目だA、今は……何も言わないでくれ」
背もたれに押し付けるように、私の肩を掴む。いつの間にか全身をこちらに乗り上げており、上から体重を掛けるようにブラッドハウンドは私に跨った。
「はっ……あなたは、私を嫌っていい。これでは崇高な戦士だとはとても名乗れないから」
長かった、と思う。キスの合間にゴーグルから透けて見えたブラッドハウンドの瞳と目線がかち合った時、この人が舌を押し付けてきた感触がまだ残っている。全身が火照っていて私はこの場から一歩も動けそうになかった。
「……」
「A」
体を離し、立ち上がったブラッドハウンドがこちらを覗き込む。差し出された手を握って私も立ち上がるが、足に力が入らずその場にへたりと座り込んでしまった。
「…………すまない」
遅れて帰ってきた謝罪がなんだか可笑しくて私は力なく笑う。それでも心なしか満足そうなこの人を見て、また同じチームで戦えるのだな、と安心した。
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オーキッド(プロフ) - 最高に面白くかつ文才あふれる読みやすい小説でした。ブラハ沼に見事に落とされました。ファンとして続きを楽しみにしております。 (2021年8月19日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
名無し70039号(プロフ) - ブラハの小説ってすんごいレアだと思うので素敵な作品に出会えて私感激…胸キュンが止まりません!!!!!更新楽しみにしてます!! (2021年6月18日 10時) (レス) id: 6045cd7502 (このIDを非表示/違反報告)
椿麒麟(プロフ) - 体が痺れるぐらいとても素敵なものを読ませていただきました!更新楽しみにしております! (2021年6月1日 7時) (レス) id: 5450775e17 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - ブラハが好きで楽しくきゅんきゅんしながら拝読させていただきました。とても幸せです(*'-'*)更新楽しみにしております! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 27e019c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
たろう - 3ヶ月程前に見つけまして密かに読ませて頂いておりました。ブラハ大好きなので見つけた時は嬉しくて…読んでみたら私の中のブラハのイメージそのもの!ドキドキしながら何度も読ませて貰っています!お忙しいと思いますが続き楽しみにしています(*´`) (2021年5月23日 20時) (レス) id: b492fc9660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無し者 | 作成日時:2021年1月5日 22時