No.13* ページ17
･A
ミランに本を貰ってから…っていうかミランが本を僕の部屋に置き忘れてから1週間経った。
この1週間、ミランが僕の部屋に訪ねてくることはなかった。
今まで1週間も僕の部屋に来ないなんて珍しいことだった。
食事を届けてくれる使用人と一言二言話しただけ。
声を発していないから自分の声を忘れそうだ。
｢……ジュブ島、か｣
1週間。
僕はジュブ島のことで頭がいっぱいだった。
許されるなら行きたい。
僕のことなんて誰も知らない、外の世界に。
だけれど駄目なんだ。
僕がふと人に触れたらその人は死んでしまうから。
なんて魔法だ。
残酷で、悪質で……
ひとつの希望もなくなれば、僕は心置き無く死んでいた。
だけど、僕には愛する母様もミランも父様もいる。
｢……。｣
自分の頬に、手を重ねる。
自分で触ったって死なないことは分かってる。
『A様。』
壁越しに使用人の声が聞こえた。
もう夕食の時間か。
受け渡す小さな窓からトレーが出てくる。
｢……ありがとう、ございます。｣
『……。』
もう、行ってしまったのだろうか。
僕はトレーを机の上に置く。
今日はパンとスープと牛肉や野菜の炒め物。
｢……はは、｣
切る料理なんてひとつもないのに、ナイフがトレーの上に置かれている。
数年前から、こんなことがたまにあるんだ。
これで自分で死ねって言ってるのか。
こんなので自分を刺したら、なかなか死ねないだろうな。
おかげさまで僕の心はちゃんと刻まれてる。
しぶとく生きてると思わないで欲しい。
僕は心が強くなんてない。
簡単に人を死なせることができる魔法を持ってるくせに、自分は死ぬのが怖い、臆病者なんだ。
ナイフを手に持って、つんつんと心臓の辺りをつついてみる。
切れ味なんてたかが知れてるから、痛くも痒くもない。
？？｢……っ、何してるの……！！！？｣
……へ、？
誰……？
？？｢置いて、それ、置いて……！！｣
いつのまにか人が入ってきたのかな。
扉の方見ても誰もいない。
？？｢わー！それ！置いて！！｣
？？｢ヤー！もう置いてるだろ。｣
さっきから、知らない声が聞こえる。
？？｢上！上だよ上！｣
……は？
上？
……嘘でしょ、
ここ、王宮の最上階だよ……？
？？｢君を迎えにきたよ。いや……攫いに来た。｣
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名無し77872号(プロフ) - スミスキーさん» ありがとうございます！しっかり伏線回収したいと思います！ (2021年8月19日 21時) (
レス) id: 7a2b063138 (このIDを非表示/違反報告)
名無し77872号(プロフ) - お豆腐さん» ありがとうございます！続編も出ましたので是非チェックお願いしますー！！！ (2021年8月19日 21時) (レス) id: 7a2b063138 (このIDを非表示/違反報告)
スミスキー(プロフ) - この小説面白くて凄く大好きです！！更新頑張ってください！！ (2021年8月14日 12時) (レス) id: 78ab9a25ad (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - この小説すごく面白くて大好きです！！更新されるたびにニヤニヤしながら読んでしまってます笑 (2021年8月14日 8時) (レス) id: 236bbfcab0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し77872号(プロフ) - ヌナさん» ありがとうございます！コメントめちゃくちゃ嬉しいです笑 これからもよろしくお願いします！ (2021年8月2日 19時) (レス) id: 7a2b063138 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みぞのなか x他1人 | 作成日時：2021年7月14日 0時
