【宇野昌磨】true love【羽生結弦】

23. ページ23

.

[ A ]


時間というのは早いもので、アイスショーまであと残り10日も無くなった。
練習に練習を重ねだいぶ形になったが、やはり最後のトリプルアクセルからの流れが決まらない。
後はそこだけなのに。


｢うーん…あとはフィーリングで行くしかないわね｣

『えぇー…』


コーチにも言われてしまう始末。
なんで、ここだけこんなに合わないんだろう…。



｢まぁいいわ。少し早いけど、今日は終わりにしましょう｣


ここ何週間かずっとこのプログラムに時間を費やして、2人ともクタクタ。
見かねた先生が、いつもより少し早く切り上げてくれた。




｢はーーっ！疲れたぁ！｣

『ほんとだねー…筋肉痛どころじゃないよもう』


帰り道。
いつも真っ暗なその道が、今日はまだ少し明るい。
昌磨と2人、ふたつの影が並んで歩く。


｢何ていうか…ラブソングって難しいね｣

『少し表現がしずらいよね』


ラブソングでも何でも、さらりとやってのける結弦くんの凄さを実感する。
もの凄く努力してるから、出来るんだろうけど。



｢…Aはさ、｣

『ん？』

｢…Aは、好きな人っている？｣


私の気持ちを知ってるのか知らないのか、昌磨がそう言う。


『…いるよ』

｢そうなんだ。俺の話ばっかりでAのこと聞いたことなかったからさ｣


照れ笑いする昌磨の心には、きっと美咲さんしかいない。
綺麗に笑う、美咲さんしか。


『…でも、叶わないの。その人は私のことなんか見てないから』


なんか、もう良いかな。
もう疲れちゃった。


｢…｣

『いつでも、1人の人ばっかり。でも、そんな一途なところも好きなんだ』


ねぇ昌磨。
鈍感な昌磨でも、そろそろ気付いたでしょ？


｢…A、｣


『好き。私、昌磨が好きだよ』

24.→←22.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す