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[ A ]
「ねぇ、A」
大好きなあなたに名前を呼ばれるだけで、私の胸はきゅんってときめく。
ぽかぽかして、心地よくて。
一瞬で心が満たされる感じ。
『なぁに、昌磨』
「いや……あのさ、今度の土曜なんだけど」
ご飯誘おうと思って、と照れる昌磨の表情に、さっきまでときめいていた胸がぎゅっと締め付けられる。
こんなことで一喜一憂する自分が、たまらなく醜い。
…だって私は、この後に続く言葉を知っているから。
「美咲さんに、都合が合うかどうか聞いてみてくれないかな」
今崎A。私。20歳スケーター。
いま、叶わない恋をしている。
私は、昌磨が好き。ずっと前から、ずっと好き。
だけどあなたは、
『…うん。分かった、後で聞いてみるね』
「あれ?Aと昌磨くん、どうしたの?」
そう言って近づいてくる私たちの先輩スケーター。
美咲さん。22歳。
凄く美人で、誰にでも好かれていて頼れる存在。
昌磨は、美咲さんのことが好き。
そのことを打ち明けられたのは、今から丁度1か月前のこと。
私の大好きな笑顔で 「美咲さんが好き」 なんて言うから、私は何も言えなかった。
ううん、言わなかったんだ。
何でも話せる、この関係が壊れるのは嫌だったから。
「…内緒です!ちょっと、外で涼んできますね」
どうしてもその場にはいたくなくて、無理やり理由を付けて席を立ち、リンクを出て外の空気を吸いに行く。
『はぁ……』
今頃あの2人は、仲良く世間話でもしてるのだろうな。
もしかして、もう土曜日の予定とか聞いてたりして。
『私は、お役御免だなぁ』
もう1度深くため息をついて、外を眺める。
2人きりにしたことを後悔しつつ、昌磨のためにもこれで良かったよね、と自分の中で決めつける。
…私と昌磨が出会ったのは、7歳の時だった。
7歳からフィギュアスケートを始めた私。
同じスケート教室の昌磨の演技を初めて見た時、私はその幼いながらも力強い演技に心惹かれた。
それから人見知りの昌磨と、ゆっくり時間をかけて少しづつ話すようになって。
『昌磨はステップが上手だから、私はジャンプをがんばるね!』
そうして、いつか一緒に滑ろうね、って話して。
いつしか私は演技だけでなく、昌磨のことが好きになった。
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菜愛(プロフ) - 最後に、続編を希望してくださっていたみなさん、ありがとうございます。本当に本当に長らくお待たせいたしました…( ; ; ) (2020年12月28日 2時) (レス) id: 6b60a27113 (このIDを非表示/違反報告)
菜愛(プロフ) - 作者の菜愛です。この度、続編を作らせていただきました。今までコメント下さった方には、とても感謝しています。中には占ツクを去ってしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、もし宜しければそちらの方も見ていただけると幸いです。 (2020年12月28日 2時) (レス) id: 6b60a27113 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 完結おめでとうございます !この今後が気になっちゃいます !続編希望 ! (2018年4月30日 23時) (レス) id: d9b4c767f6 (このIDを非表示/違反報告)
菜愛(プロフ) - みくさん» みくさん、本当にたくさんのコメントありがとうございました( ; _ ; )!行き詰まった時いつも励みになっていました。四角関係、人気のお2人を上手く表現出来たか不安ですが、なんとか完結まで辿り着きました..!拙い文章でしたが最後までありがとうございました(^ν^) (2018年4月28日 19時) (レス) id: ed4e74d40b (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 完結おめでとうございます!四角関係と聞いてどんなお話なんだろうと思ってたんですがとても綺麗な終わり方ですっきりしました!菜愛さんの書くお話は読みやすくて表現も美しくて大好きです。素敵なお話をありがとうございました! (2018年4月28日 14時) (レス) id: e662d7ec1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜愛 | 作成日時:2018年4月1日 1時