9つ目の嘘 〜嘘を知る者〜 ページ12
迅side
Aが行ってしまった。
あー、やっぱりちょっと言い過ぎたか。
でも、最善の未来へ向かう為には必要だった。
Aは、4年前の侵攻で家族を失った。
ただの家族ではない、
Aにとって唯一の存在を。
もしAにSEがなかったなら、
Aはあんな辛い思いはしなかっただろう。
まだ、SEというものが知られていなかった頃だ。
仕方なかったのだ。
幼かったAが、SEの能力を周りに伝えてしまったことも。
Aの両親が他の子とは違う自分の子を不本意ながらも気味悪く思ってしまったことも。
周りの人たちがAを異質なものとして見てしまったことも。
Aが、その感情を、視線を、感じ取ってしまったことも。
全て仕方がなかった。
オレには出来なかった。
未来が見えていようと。
過去を変えることは出来ない。
ただ、最悪の未来が見えて。
ただ、最良の未来が見えて。
ただ、ただ、ただ、ただ、ただ、ただ、
未来が見えるだけだったから。
未来が全て分かっても。
どの未来を、
誰にとっての幸せな未来かを選ぶことは出来ない。
みんなにとっての最善を。
言い訳みたいだけど。
Aが幸せな未来はあったから。
Aは4年前に兄を失くした。
Aの特異性を知ってもなお、
変わらず親愛を向けていたAにとって唯一無二の存在。
一緒にいた両親もそのとき亡くなったそうだ。
Aの血の繋がりは途絶えた。
Aの親戚もいない。
Aはずっと独りぼっちなのだ。
最初に知り合った頃はあんな性格ではなかった。
優しくもなかった、
笑うことなんてなかった、
でも、それでも、
嘘をつくことはなかった。
演じてなんかいなかった。
兄を求めて。
Aは自分はいなかったとでもいうように、
ある日を境に急変した。
自分を偽るようになった。
オレはそれでもいいと思った。
生きる意味を見出せたなら。
もうAの兄はいない。
本当のAを知る人たちはいつも次の約束を取り付ける。
《また》
Aが
勝手にいなくならないように。
いつの間にか消えてしまわないように。
ーーーーーー
難しかった・・・
口調とか合っているでしょうか？
書きながら不安になります。
Aくんの機嫌がちょっと悪くなってますが、すぐ復活します。これから過去編も入れつつ進めていこうかなと。
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作者名：レモンはちみつ | 作成日時：2022年3月22日 0時
