波 wave:1 (緑さんと赤さん) ページ24
打ち寄せる波
優しい音が鼓膜を微かに揺する
髪の毛の間をすり抜ける風は少し冷たい
感じる潮の臭いはまだ浅い
肌を柔らかく包む光が暖かい
海はまだ早いんじゃない？
僕のその問いかけに
だからいいんだよって
君はちょっぴり笑みを浮かべてそう答えた
波打ち際を歩く僕たち
ふたり並んだり
君が先を歩いたり
僕が先を歩いたり
不意に駆け出した君
君は我慢しきれず
スニーカーを脱ぎ捨てた
裾が濡れるのもかまわず
しぶきを上げて入っていく
僕は身動き出来ないでいた
蹴りあげられた長い足に絡む
柔らかな光を浴びて 輝く雫達
ひとしきり波と戯れて
軽やかに身体を翻し
こちらに向けられたのは
最上級の笑顔
「しょおちゃん 海 まだ冷たいっ！」
わかってるクセに
自分から飛び込んで行って
やっぱりまだ早いね なんて報告
なにやってんだよ
なんてあきれたふりをした僕
思わず 魅せられていたなんて
絶対言えない
さっきまで子供みたいにはしゃいでた君
何の前触れもなくピタリと動きが止まる
「どうした？」
何でもないって繰り返し答えるけど
俯いて 今にも泣き出してしまいそうな君
波の音
吹き抜ける風
潮の香り
柔らかな光
スンと鼻を鳴らしながら
君がポツリ呟く
「今のおれみたいだ……」
寄せては返す波に立ち尽くす君
その度に 足元の砂は静かに流れる
まっすぐ 立っているのも難しい
「夢中になってるときは
楽しくて 楽しくて
あっという間に過ぎちゃう
だけど ちょっと立ち止まると
どんな風にそこに自分がいたのか
何をしてそこにいたのか
本当にそこに自分が必要なのか
どうやってそこに立っていたのか
とたんにわからなくなっちゃうんだ……」
大きな波が打ち寄せ
次には大きく君の足元を拐う
「行くなっ！！」
僕は無意識に君を捕まえた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
43(プロフ) - 読んでくださった皆様、ありがとうございました。「おげんきですか?」公開しようかやめようか…相当悩みました。でもあいたいんだもん…。不快な思いをされた方もいたかもしれません。申し訳ありません。いつかの再開を願って………。 (2021年3月14日 21時) (
レス) id: eb8e95ff3b (このIDを非表示/違反報告)
43(プロフ) - 読んでくださった皆様、ありがとうございます。にのちゃんの白いシリーズ、やっとこさ書き上がりました。自分で縛りを作ったクセに書けない…苦戦しました(>д<*) (2020年5月5日 0時) (レス) id: eb8e95ff3b (このIDを非表示/違反報告)
43(プロフ) - イェーイ(A担)さん» イェーイ(A担)さん嬉しいお言葉ありがとうございます！なかなかの亀更新で申し訳ありませんm(_ _)m今後も引き続き楽しんで頂けるよう、“頑張って”とまぁくん達に伝えておきます。(彼等がヤル気になってくれないと文字に起こせないのでw)ありがとうございました！ (2020年3月18日 6時) (レス) id: eb8e95ff3b (このIDを非表示/違反報告)
イェーイ(A担) - いつも見てます^ ^更新まだかなぁと、思っていつも楽しみにしてます^ ^ (2020年3月18日 3時) (レス) id: 758b98fb6a (このIDを非表示/違反報告)
43(プロフ) - 読んでくださった皆様。ありがとうございます。“白い息”と“白いカケラ”を書いた時は、何も考えていなかったのですが“白い”二つ目だな…なんて思って。“白い”シリーズ書きました。あとはニノちゃん。頑張るぞ！ (2020年3月4日 19時) (レス) id: eb8e95ff3b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：43 | 作成日時：2018年11月28日 7時
