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押し付けられ塗りたくられたもの ページ7

兄貴と出会って、他人と関わることも増えた。



団子屋のばあさん、質屋のジジイ、呉服屋のオヤジ、飯屋のねえさん。

兄貴がいなきゃ俺の視界にも脳の片隅にもいなかった他人。




「A、獪岳、ちょっと手伝っておくれ。」

「おーっす。ほら行くぞ獪岳。飯分は働かんとな。」

「はいはい。」



この村には若い人が少ない。
俺達には金がない。


ならばと腹が減っていた兄貴は力仕事なんかを代わりにやるからタダ飯を食わせろと交渉した。
他にも勘定の直しをしてやったり、用心棒や配達までこなした。


代わりに飯を食わせてもらったり、新品の着物をもらったり、部屋に泊めてもらったり。



見事だった。

そんなこと考えられなかったから。
俺がもし100歳まで生きるとしてもそんな考えは出てこなかっただろう。



何でも屋みたいに村中をうろちょろしていれば俺も兄貴のように顔が知れていく。

嬉しかった。

少しずつ兄貴と同じになれているような気がして。
まだまだ兄貴のように上手くは出来ないけれど、兄貴と一緒なら、どんな仕事だってこなせた。





「旅人も随分増えたなあ。」

「村にも活気が戻ってきた。それもAと獪岳のお陰さね。」

「おうよ。もっと褒めてくれていいんだぜ。」

「兄貴…………。」





人から人に伝わっていく噂のお陰で村に寄っていく人が増えて、爺さん婆さんは繁盛して嬉しそうだ。

宿屋も飯屋も呉服屋も、全部。







俺たちのおかげなのだと。









大人のいない子供には世界は見向きもしない。

だから俺は見返してやりたかった。
誰を、とかじゃない。
ただ、俺が納得するような答えが欲しかった。


相手から奪って、傷つけて、知らしめようとした。







「一つの方法として考えるくらいはしてもいいんじゃねぇか?」

「そ、そうか。」

「そうだよ。俺とお前は違うんだから、活路の見出し方だって違う。

俺はな、獪岳、お前に押し付けてんだよ。俺のやり方をな。
もしかしたら獪岳だって受け入れてくれてんのかもしれねぇがな。やってんのは、やっぱり押し付けなんだよ。」




寂しそうに笑った兄貴に俺はああ、と思い出す。





(そういえば、兄貴も孤児だったんだ。)

最後まで足掻いていたいのさ→←俺には眩しい世界なんだ



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設定タグ:鬼滅の刃 , 獪岳 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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シホニャン - 更新楽しみにしてます。獪岳、実弥推しなので嬉しいです。 (2020年3月27日 13時) (レス) id: 39a09b6cce (このIDを非表示/違反報告)
零華 - 続き、楽しみにしています!。  身体を、労りながら、頑張ってください。( ≧∀≦)ノ (2020年3月2日 3時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きょーりん | 作成日時:2020年2月29日 20時

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