誰かの夢 ページ44
*
｢…ここは、？｣
目を覚ますと病室ではなく一面植物で埋められた場所に立っていた。
よく見ると複数の種類の花のみが咲いていて、心地よい風に揺れている。
｢やあ、竈門くん。｣
｢！！…Aさん、？｣
声のするほうを向くと少し遠くにAさんの姿があった。
困ったように、申し訳なさそうに笑っていた。
｢これから話すことは忘れてくれ。…なにせ夢なのだから。｣
｢っ、夢？…こんな、に、意識がしっかりしてるのに……。｣
遠いのにすぐ隣で話しているような感覚に俺はやはり夢なのだろうか、と思う。
それに、亡くなったはずのAさんが目の前にいるのだ。夢でなければ説明がつかない。
｢君は、君たちは確実に今までの戦況をひっくり返すだろう。いくつもの不可能を可能にするだろう。
その代償として沢山の困難に立ち向かわなければならなくなる。
決して屈してはいけない。何故なら必ず君たちなら乗り越えることが出来るからだ。
沢山の犠牲を目にするだろう。何度も投げ出したいと思うだろう。
……俺は君を縛ることにする。
君は逃げてはいけない。
その事実から目を逸らしてはいけない。
辛くても前に進まなくてはならない。｣
｢…Aさん、泣いてるんですか……？｣
遠くでちゃんとは見えなかったが、確かにAさんの頬には涙が伝っていた。
｢…ああ、悲しいんだ。君たちのような子どもに任せなければいけないということが。
本当なら、大人に守られていなければいけないのに。｣
目をふせ、ポロポロと涙を流すAさん。
風が髪を靡かせた。
｢ッッ、俺たちをなめないでください！！！｣
｢ぁ、｣
｢俺たちは確かにまだ子どもかもしれない…でも！！
守られなければ何も出来ない子どもではないんです！！｣
｢……そうか、…………そうだったな……。｣
はあはあと息を切らせて、思わず叫んでしまった。
それでもAさんは一瞬驚いたように目を開いたがすぐに優しく笑って頷いた。
｢すまない、失言を許して欲しい。
君たちは強い。…だから俺の思いを、任せてもいいだろうか。｣
｢！…っはい！！｣
相手に聞こえているはずだけど、自然と声が大きくなる。
嬉しそうに笑ったAさんはありがとうと言った気がした。
｢……あと、俺の友人は決して悪い奴ではないんだ。わかってやってくれ。｣
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年11月3日 23時
