誰かの夢 ページ42
*
炭治郎が目を覚ますとそこは病室だった。沢山の点滴に繋がれており、未だ覚醒しきれていないようだった。
バリンッ!
「大丈夫…?戦いの後、二ヶ月間意識が戻らなかったのよ……?
目が覚めて、良かった…。」
何かが割れる音がして、そちらに目を向けるとカナヲが驚いたように立ち尽くしていた。
そのままベッドに近づき安心したのか涙を流していた。
「あのーこれ、カステラ置いとくんで。暫くしたら下げてください。傷みそうだったら食べちゃっていいので。」
「あ……ありがとう、ございます…。」
そう言ったのはカナヲの後に病室に入ってきた隠の後藤だった。
彼は炭治郎への贈り物を届けに来ていた。
いつもの通り意識は戻っていないと思い淡々と告げた言葉に返事があったことに一瞬思考が停止した。
「意識戻ってんじゃねーか!!!もっと騒げやアアア!!!!」
そう怒鳴り散らす後藤にカナヲはペコペコと頭を下げた。
「きよちゃんすみちゃんなほちゃーん!!アオイちゃーん!!!炭治郎意識戻ったぜええ!!!!」
その声に三人がとんできた。三人とも涙でくしゃくしゃになっていた。
それに続いて、アオイも病室へ飛び込んできた。
「意識が戻って良かった〜〜!!あたしの代わりに行ってくれたからみんな、…うわあああん!!!」
「ありが、…とう、。他の…みんなは……大丈夫、ですか…………?」
この問いかけには後藤が答えた。
善逸は翌日には目を覚ましていたらしく、もう既に任務に復帰していた。
宇髄も、自分で歩けるほどだったらしい。
「でも、伊之助さん、すごく状態が悪かったの。少量でも毒が回ったせいで呼吸による止血が遅れてしまって、……でも!何故か軽い止血、応急処置はされていて、少し前に目を覚ましています。」
「あとは灰柱だな……。」
「あ、…。」
炭治郎はあの時触れた冷たさを思い出した。
人の死をまた間近で体験した事も。
「灰柱って柱の中じゃかなり優しかったから、結構覚えてる。俺ら隠にも気を使ってくれてよ。
でもやっぱ柱だからめちゃくちゃに強ぇから、死んだって信じられなかったよ。」
「……Aさん、……。」
「一緒に任務に行ってたお前らには悪いが葬式ももう終わったからよ。お別れ、させてやれなくてごめんな。」
そう言われ、とうとうこの世からAが消えてしまったことを実感した。
短い間だったのにそれでも覚えているAの強さと優しさが心を埋めた。
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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年11月3日 23時