【鬼滅の刃】灰燼に帰す【男主】 (ページ32)

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虫ケラボンクラのろまの腑抜けページ32

それでも任務はあるし、鬼を殺さなければならない。

淡々と日々を過ごし、いつも通りの日常ではあるが、やはり俺は道を失ったままだった。

母親を殺したのはきっと鬼だし、憎い。
けれど母親を喰った鬼を殺しても母親はその腹から戻ってくることは無い。

そう思うと、何もかもがどうでも良くなってくるのだ。

合同任務では白い目で見られる。
何せ刀がないからだ。

俺は刀をもらわない代わりに、日輪刀と同じ素材で作られた拳鍔を主な武器として使っていた。足には脚絆。
鬼を殺すにはそれで十分なんだ。

……きっと、このままでは何も変わらない。

認められたくて、鬼殺隊に入ったのだ。今度は母親ではなく、周りの人間を認めさせてやる。

そのためにはやはり柱になる他なかった。

だから鍛錬も怠らなかったし、全ての任務をしっかりこなした。
誰も俺をからかうことは無くなったし、このような戦い方があると知られるようになった。

空いた穴に少しずつ何かが埋まっていくような気がした。

そして、お館様に呼ばれ、俺は鬼殺隊の灰柱になった。

なんて嬉しいことだろう！俺は認められたのだ。

お館様に、鬼殺隊に、守ってきた人々に！！

柱になったことで、俺の心は少しだけ色を取り戻した様だった。
なんのために、なんの意味があって、とただただ任務をこなしてきた日々を時々思い出す。

比べれば今はどうか？
俺は、柱として認められた。その称号に恥じない行動をすべきだと、自分の道がまた作りあげられた。

柱合会議で初めて顔を合わせた個性的な面々に俺は心を踊らせた。

この者たちと共に下の階級の隊士の目標となるのだ。

｢貴様、緊張感が足りてない。気を引き締めろ。あと、一つ一つの動きが鈍い。先のことを予測して動け。｣

｢初対面にしては随分とあれこれ言ってくれるのだな。しかし、その忠告しっかり受け止めよう。｣

会議が終わって、すぐにそう俺に言ったのは俺より小さい柱だった。
だが体型にそぐわないその威厳に思わず俺は背筋を伸ばした。

この後、飯屋でばったり会い、俺のあまりの行儀の悪さに懲りずに小言を言うのはまた別の話。

つまり言いたいのは俺は柱になって変わった。

柱になって、彼と出会って、確実に俺は変わったんだ。

だからあの時彼を庇ったのも、心の中の何も言わない俺は当然のことだ、と頷くのだ。