五つ目の灯火 ページ5
「私は妖だ。」
「……?」
「正体と、言ったらいいか。私の正体は古戦場火。戦場に眠る魂が火の玉となる。それが古戦場火。」
主様の元へ駆けつけた時は今の姿だった。
でも魂が消えた訳ではなく、何となく他の魂のことはわかる。
先程のように鶴見さんをみて懐かしくなったのも、だ。
「そして私はこの状況、世界を知らない。何も、だ。」
「ま、待ちたまえ。……妖?そう言ったのか?」
「ああ、私は妖だ。」
信じられないか。
それは当たり前だ。
何せ見た目が妖とは似ても似つかないからな。
…人の考える妖にだが。
もっとおぞましい姿なら信じてもらえただろう。
「素晴らしい!!」
「あ?」
「私はその類にはお目にかかれたことがない!もっと教えてくれ、君のことを!」
ぎゅっと両手を包まれ、一瞬体が硬直するも、手袋のおかげで何とかなった。
それにしても妖が目の前にいると分かっていながらよくここまで……。
「えっと、一応火の玉だから火は出せる。私自身も魂だからな。そのせいか私の肌に触れると火傷をする。」
「ふむ、だから手袋やマフラーをしていたのか。」
「ああ。理解が早くて助かる。」
私の肌は見た目は普通だが触れると火傷を負ったり、肌が爛れたりする。
手袋やマフラーをつけるのは、敵意のない者を傷つける訳にはいかないと悩んでいた私に主様が提案してくれた。
「何か鶴見さんが関わる
「戦、……日露戦争、だな。ロシアとの戦争だ。」
その戦場は寒い場所らしく、魂の声も納得がいく。
「私をここに連れてきた魂は鶴見さん、貴方のためにここに戻ってきたらしい。魂を取り込んだ私は彼のために、代わりに貴方に忠義を誓おう。」
真っ直ぐ、……彼のために。
そう伝えると鶴見さんはなんとも心強い仲間だ、と頷いてくれた。
「と、突然で悪いのだが、私はこの世界を見たい。」
「もし何か出向く用事があるのなら私を連れて行って欲しい。」
「もちろん迷惑はかけない。」
かなり無茶なお願いだったかと後悔する。
だが鶴見さんは分かった、と椅子から立ち上がる。
「着いてきなさい。」
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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年3月23日 21時