三十七個目の火光 ページ37
寒さを凌ぐため必死に地面を掘るが、完全に凍っており四人がぎゅうぎゅうになり入るほどの大きさであった。
｢これ以上掘れない！！これでなんとかしのぐしか無いぞ！｣
小さな穴に寝転び身を寄せ合う。
するとチカパシが布越しにAの腕に触れる。
｢あったかい……。｣
｢くそっ穴が浅すぎる…！これでは風よけにしかならん、。｣
谷垣は橇を引いていた犬たちを引く。
犬たちは四人の上で丸くなり多少の暖かさが保たれた。
｢というか、こんな状況でも本当に起きないな……。｣
｢し、死んでねぇよな？｣
チカパシが胸に耳を近づけて、動いてる、と告げた。
全く止まない吹雪、海岸近くで気温もより低いこの状況を切り抜けるには、ただ耐えるしか無かった。
｢寒い穴の中にいると、塹壕を思い出すな。…？…………寝るなよ、杉元！死ぬぞ。｣
｢ああ、｣
朧気な杉元はふと、思い出す。
隣にいるのはかつての友人。
血まみれの友人。
鬼神の如く、敵へと突進する自分。
段々自分の手は汚れていく。
汚れて、汚れて、汚れて、汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて汚れて、、、、、、、、
＿＿＿＿杉元、
(アシㇼパさん…)
｢光だ、｣
杉元の霞んだ視界に瞬く光。それはあの少女だと言うのか。
思わず体を起こして谷垣と確認する。
｢月かな？｣
｢いや…網走潜入がちょうど二ヶ月前だから、あんなの大きいはずは……瞬いてる！！｣
｢絶対に月の光じゃない！！あれは、燈台の明かりだ！｣
ーーー
ーー
ー
バタン、と扉が閉められ、命からがら小屋へとたどり着いた四人。チカパシは谷垣に抱えられ、寝ているAは杉元が背負っていた。
肩で息をしながら暖かさにホッとする三人。
｢おい、古火はどうしたんだ。｣
｢ね、寝てる。｣
｢は？｣
｢でもちゃんと生きてるから。｣
月島は心底呆れたように杉元からAを受け取り、椅子に座らせた。
三人はこの小屋で一番暖かい場所へ移り、体を暖めた。
｢お前ら命拾いしたな。あの燈台は日露戦争以降もう使われていないものらしい。この人たちがいなかったらお前ら今頃カチンコチンだ。｣
『ありがとう』
月島がそう告げると、小屋の所有者である老夫婦はニコリと笑った。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
