*誰だ ページ35
(そうか、殺そうとすれば流石のアイツも泣いて泣いて俺に縋り付くはずだ。殺さないで、って。)
斎藤はそれが思いついた瞬間体が熱くなった。
ふるふると震える手を見た。
汗ばんだ手のひら、この手のひらにナイフを持つのだ。
ぎゅぅぅ、と握りしめ顔を上げる。
「やっとだ、…はぁ、やっと、……!!」
斎藤は荒い息をしながらプレハブ小屋に向かった。
・
(!……足音、…陸か、?)
ザ、ザ、と覚束無い足音が聞こえてくる。
Aはドアからすぐに離れる。
しかし足音が増えた。
荒い息も聞こえる。
Aは斎藤以外に誰かが来たと感じた。
一人が何やら怒号を発している。
会話まではわからない。
誰かが見つけてくれたのか、はたまた違う誰かなのか。
その声は次第に大きくなっていく。
・
「A!!!!」
「…智司……?」
わからない、確かではないが自分のことを呼び捨てするのは斎藤か、片桐だけだった。
Aは片桐であることに懸けた。
がり、がり、と引き戸のガムテープを外す音がプレハブ小屋に響く。
(安心しちゃダメだ。陸だって可能性もある、捨てきれない。)
戦闘態勢(と言っても戦えないがそれ)を崩すことなく引き戸を見つめるA。
すると外す音が聞こえなくなる。
が、途端に引き戸を強引に蹴破ろうと誰かが引き戸を蹴り始めた。
(こ、わい、誰なんだ、一体……!)
ドォッンッ……!!
ついにドアは壊れその人物の姿が現れる。
逆光で浮かび上がるシルエット。
「くそ、手こずらせやがって……はは、残念だな。」
「り、く、……。」
希望はない。
抱いてはいけない。
何故なら斎藤の手には血のついたナイフがあったのだから。
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もちまる - 面白いです!更新楽しみにしてます(*´`*) (2018年11月4日 23時) (レス) id: baed5daad7 (このIDを非表示/違反報告)
オキ(プロフ) - 主人公の京子ちゃん溺愛っぷりいいですねw更新頑張ってください! (2018年11月4日 22時) (レス) id: 0da5fa57f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょーりん | 作成日時:2018年11月4日 19時