4、愛別離苦 ページ5
潰れた家の前には父であるゲラルト、姉であるディアナがいた。
『お父さん！！お姉ちゃん！！』
「A！？逃げなかったのか！？」
ゲラルトは魂が抜けたような表情のAを振り返り怒鳴るように言った。
『逃げられないよ！皆で一緒に＿＿＿＿＿』
「お父さん早くお母さんを！！！」
ディアナは涙声で叫んだ。
慌てて駆け寄ったAの目に映ったのは、瓦礫の下から覗く、結婚指輪が光る左手のみだった。
『おかあ、さん…？』
「Aも手伝って！！！」
ディアナは必死に手を引くが、瓦礫に押し潰されている母 フローラはビクともしない。
「無理よ。あなたたちだけでも逃げなさい。
ディアナ、A 母親らしいことが何も出来なかった。本当にごめんなさい。愛してる。いつもあなたたちを想っているわ。
ゲラルト この子たちをお願い。」
「君だけを置いては行けない。諦めきれないよ。」
震えた声でそう口にしたゲラルトはディアナに向き直ると、肩を強く掴み何かを言い聞かせた。
父と姉のやり取りをぼんやりと眺めているAは何も理解出来ていないようだ。
ディアナは涙を流しながらゲラルトの言うことに嫌、嫌と首を振っている。しかし、父親の眼差しに涙を飲んで頷くしかなかった。
「A 愛してる。幸せになるんだぞ。」
Aはディアナに手を引かれて家と家の間を走った。
『お姉ちゃん、お父さんとお母さん大丈夫だよね？お母さん顔見えなかったけど喋ってたし。』
「っ、うん、大丈夫…大丈夫だよ…」
ディアナがそう言った時だった。
家の影に隠れていて見えなかったのだ。その巨人の姿を。
ディアナは巨人を見た瞬間、Aを思い切り突き飛ばした。
巨人の手が捉えたのはディアナだった。
『お姉、ちゃ』
「逃げて！！！」
掴み上げられたディアナはAに叫んだ。
Aはただ眺めていた。苦痛に泣き叫ぶ姉の姿を。引き裂かれていくその四肢を。滴り落ちる鮮血を。
『…おねえちゃん？』
巨人はぽつりと呟いたAを一瞥するとまるでそこに人などいないかのように通り過ぎて行った。
『なん、でわたしのことはたべないの？』
残った者はいないかと周辺を飛び回っていた駐屯兵に保護されたのはそれからすぐ後のことだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ま い ま い(プロフ) - あたりんさん» 返信遅くなって申し訳ない…めちゃくちゃ嬉しいです！！！ジャン推しの星になれるように頑張ります！！！ (2023年4月11日 16時) (
レス) id: 140028ed61 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - ジャン好きなので嬉しいです！！更新楽しみにしてます！ (2023年4月2日 12時) (レス) @page20 id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まいまい | 作成日時：2023年3月19日 19時
