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その後しばらく女の子達とお話をしていた時の事だった。
不意にガラッとドアが開き、そちらに目線が集中する。話していた女の子が、あっ!と声を上げた。
「Aちゃん!浦田君来たよ!」
どうやら彼が噂の浦田君らしい。
柔らかい茶髪に、綺麗な翡翠色の瞳。少し他の男の子よりも身長が低めらしい。160cm前半くらいだろうか。
他の男の子達に囲まれながら笑うその顔はとても綺麗で。あぁこれは爽やかイケメンと騒がれるだけあるなぁなんてしみじみ思った。
「はぁ〜やっぱイケメン…超かっこいい…」
「浦田君のこと好きなの?」
「違う違う!どっちかと言えばアイドル見る感覚!好きというより推しみたいな感覚だよ〜」
「多分女の子の大半そうなんじゃない?本気で恋してる子もいるけどね〜」
ほうっとため息をついてうっとりと彼を眺めるその子の表情は、さながら好きなアイドルの出演するコンサート会場にいる女の子そのもの。確かに、恋する乙女とは少し違う気がする。
座席表を確認したらしい浦田君は、真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
「浦田君!席ここだよ〜!」
「おっ、サンキュー。」
「じゃあ私、そろそろ席戻るね!」
「うん、お話してくれてありがとね」
パタパタと自席まで戻っていく女の子達。それと入れ違いで、浦田君が隣の席の椅子を引いて座った。
「四ノ宮さんであってる?」
「うん、浦田君だよね。」
「そーそー、ヨロシクな!」
そう言って彼は私に向かってニカッと笑った。白い歯を見せて笑うその表情は、とんでもなく綺麗な笑顔で、彼の人の良さが全面に現れていた。
優しそうな人で安心した。さっきまで緊張してたのが嘘みたいだ。
「うん、よろしくね。」
彼につられ、私も滅多に上がらない口角を少しだけ上げて返事をした。
……その瞬間だった。少しだけ、本当に少しだけ、浦田君の表情が固まった気がした。
そんな気がした1秒後には”…おう!”と元気な返事が返って来たから、きっと気の所為なんだろうけれど。
「そうだ、Aちゃんって呼んでいい?」
「うん、呼びやすいように呼んでね。」
「やった!じゃあこれからAちゃんで!」
楽しそうに浦田君が私の名前を連呼するその背では、新しい担任なのであろう教師が教卓の上にプリント類を積み上げながら”HR始めるぞー”と呼びかけている声が聞こえていた。
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作者名:Key | 作成日時:2021年7月12日 1時