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本編1 ページ10

眩しい朝日が木目を照らす、早朝。
鞄の手提げ部分に、擦り減った仮面を被るキーホルダーを鳴らしながら、慌ただしく階段を駆け下り、拵えられたばかりの朝食をかき込んだ。
その後立ち上がったのは瞬間、真っ先に洗面所へ駆け込む。

そんな嵐のような女の子にも、慌ただしかった手元がふと止まってしまう時間がある___



「あ」



歯ブラシの間から漏れた声の先には、数字の際立ったテレビがあった。



「え〜、十二位じゃ〜〜ん!」



画面に映った星座占いの結果。恋愛運が最悪らしい。
んー、と言いながら一人でに顔を顰めた瞬間、口の間から液状の歯磨き粉が出かけた。
啜ってしまい込み、洗面所まで走っていった様子にしゃしゃを入れるようにして母親が話しかけてきた。



「恋とは無縁なあんたには関係ない話ね」

「うっさいなぁー!」



間髪入れず反応した速さに、自分でも驚き肩を震わす。



「ねぇ最近どうなの?あの子とは」

「…誰のこと?」



うがいの手前に聞こえた、廊下の壁に手をかける母親の質問に、合間に選んだ言葉でシラを切った。

これ以上耳に入れたくないというように素早く階段を駆け上がり、自室の鏡の前で髪を高い位置で結った後、マフラーを結んで玄関まで直行。
ローファーを履く際にやべーやべー、と言葉だけの慌てぶりを見せるも、頭の中は昨日夜中まで見ていた大好きな特撮の主題歌が流れていた。



「もっと余裕持って起きなさいよ」

「へいへい」

「あと、もっと女の子らしく」

「できるわけないじゃーん」

「生意気言わない。早く行かないと遅刻するよ」

「はーい、いってきまー」



こんな適当な朝でも、私は心底満足している。
自転車を車庫から引っ張り出し、乗車せずに手漕ぎで家の前を通り過ぎる。

これが、日常。
いつもの道路の上は、昨日の雨を照らす太陽のおかげで煌めいている。



「おはよう!」

「ん、おっ!おはよ!」



そして、少し歩いた後、後ろから肩を叩いてくる男。
この男と鉢合わせするのが、最近の朝の習慣なのだ。

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作者名:5674C | 作成日時:2022年7月18日 18時

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