プロローグ4 ページ7
残暑の季節。
学生が活気付く時期と言えば、こんにちが頃合いだと思う。
九月上旬。文化祭という、学生の多くが盛り上がりを期待するイベントがあるからだ。
学生主体で祭り騒ぎになれるのは、この時でしかない。かくいう私も、高校に入学してから初めての文化祭。
気心の知れた友人達と阿呆のようにはしゃぎ、童心を充分に満たしたのち、夕暮れ時から始まる片付けは終わりを迎えた。
名残惜しさの中、鏡に映る、ませた友達と化粧道具で繕った自分を見つめる。
鞄を抱えた後、自転車置き場から自転車を引っ張った。
友達と別れた下校道。ふぅ、と一息つく。肩は下がり切り、自然と遠くを見つめるようにして、山陰に隠れようとする西陽へと目が向いていった。
「オッス！」
「うわ！」
突然、肩を叩き顔を覗き込んだのは例の男、守沢だ。
「今帰りか？」
「そうだけど…どうしたの、今日は…」
夕方十九時頃に帰り道で出逢うのは、部活かはたまたアイドル活動のためか。なんとなく分かっていても話を率先するために聞いた。
「俺はレッスンだったんだ！珍しいな、Aがこんな時間に帰ってるなんて」
「だって、今日は文化祭だったの」
「え！あぁ、そうなのか。俺たちの学校は六月に似たようなことをやるせいか、普通の高校の感覚を忘れていたぞ。どうだった？」
「うん、めちゃめちゃ楽しかったよ。久しぶりに馬鹿みたいに騒いだ」
「ははっ！そうかそうか、それはよかった。昨日の朝はなんだか元気がなかったみたいだからな」
「え？あぁーまあ……うん、守沢は気にしなくて良いよ別に、ただその…体調悪かっただけ」
「何っ！？そうだったのか！？それなら無理せずそう言ってくれれば…って、それなのに学校に行って大丈夫だったのか！？保健室行ったか！？熱は…」
「いやちょ、そこまでのことじゃないって。ほんと。大した事なかったから」
「う…うむ、そうか…まあ今も元気そうだし、大丈夫だな」
そういえば顔色もあんまり良くなかったな、と言う守沢。いつの間にか会話の主導権を握られていた男と、その後も他愛のない会話が続く。
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作者名：5674C | 作成日時：2022年7月18日 18時
