にぶ野郎、どん感につき。 (ページ38)

今日:10 hit、昨日:14 hit、合計:15,443 hit

＊ページ38

「こーらっ、ゲーム中は目を逸らしちゃダメだぞ〜っ！」

「うっ…そ、そ…」

仕方なく目線を守沢に戻したが…＿＿＿数秒も耐えられる自信がない。
どうやら守沢、最初は真顔で攻めてくるらしい。
男らしく、眉目が秀逸そうに見える。隅々まで観察される守沢の顔面に、心臓の動きが勝手に速くなっているのが分かった。

＿＿守沢の真面目な顔なんて、中学の時の授業中にチラ見した横顔ぐらいだ。
淡い記憶よりも間近で、真正面で真っ直ぐに、守沢が、私を無条件に見つめてくる。

「＿＿＿＿＿」

声にならない声が私の喉仏を掴み、胸の鼓動を加速させた。

＿＿かっこいい、と。
不覚にも、そう思ってしまう。

それほど好きで、心から好きで…ずっと片想いしている相手で。

ずっと、ずっとずっと…私のこと好きになってくれないかと思ってる、私の大好きな人で＿＿＿

心の中の『好き』が止まず、想いが具現化したように耳が熱くなってきているのを感じる。
煌めいた、純粋だけど真剣な瞳が、私の心臓をダイレクトに突き刺してくる。

逸らしたらダメだと自分に言い聞かせる度に、紅潮していくのが自分でも分かった。

＿＿＿＿こんな顔見られたら……本当にまずい。

「……う、負けっ！！！！」

「うおっ！？」

「負けた負けた！私の負けっ！」

手を自分の目の前に持っていき、赤くなったであろう顔を隠して自転車を早歩きで押し漕ぐ。

「まだ変顔してなかっただろう！？」

「真顔でもう無理！あー面白いッ！面白い面白い！」

早歩きで追いかけてくる守沢に気づき、早歩きをまた加速させた。

「自分からわざとゲームを降りただろう！？」

「違う！いいの！」

「なぜそんなに顔が赤い！？」

「うるちゃいッ！」

「ちゃい！？噛んだな今っ！？」

「噛んだよッ！」

呂律も回らないぐらい、焦燥。

この後、守沢が突然勝負を申し込むという謎だった理由が、「私が元気そうに見えなかったから」だと言われ、解明した。

変顔したのも、元気づけたかったかららしい。

確かに楽しかったけど、今は照れの方が上回りそうだ。

だがその想いに応えて、今年のバレンタインは少しいいものをくれてやろうと思う。