にぶ野郎、どん感につき。 (ページ35)

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試験が、終わった。
それも、現在から遡り、約四ヶ月前。

一般入試をパスしようとしたが、塾に通っていない分周りと差が出ていることを徐々に実感し始め、自分は推薦が向いていると思い込むようにした。

こんな、体たらくで良いのか。
両親は推薦を許してくれた。私が良ければ良い、と。優しい両親だ。

とにかく、私立大学分の学費を出してもらえるのは、大学に行かせてもらえるのはありがたいことだ。
自分の思っていた形ではないのが悔いだが、世間には、金銭的な理由で断念する人だっているんだから、自分の理想だけの我儘は…良くない。

「A」

「うわっ！？」

下校の道すがら途方に暮れていると、ふいに肩を掴まれ後ろを振り向かされる。

「びっ…くりした、守沢」

「はは、すまんな！」

「後ろから……私じゃなかったらどうしてたのよ」

「うん？見慣れた自転車だったからな。いや、Aを見間違えるわけないだろうっ？」

「………………」

にこにこした笑顔は、ずっと変わらず、場に光を差し込んでくる。
…久しぶり、だと思う。2、3週間…もう1ヶ月間も顔を見ていない気がする。

この顔に支えられて、こいつの言葉に…どれだけ救われたか。陳謝したい気持ちに駆られた。

「……こんなこと聞くのは野暮かもしれないが、試験、終わったんだろう？」

「え？…うん」

そういえば、と、守沢の質問から思い出したことがある。

「その…おつかれ！ずっと頑張ってたからな！報われることを、俺は切に願っているぞ！本当に！」

…やはりだ。
そういえば守沢は、私が冬に受ける一般入試や私立入試を断念したことを知らない。

眩しく、少し気遣いが見える表情をしている。結果を本気で待ち望んでいる様子の馬鹿正直な守沢を見ると、先ほどまで考えていたもやもやは晴れていった。

「…ごめん、守沢。私ね、一般入試じゃないの」

「……え！？」

「私立の推薦。結局ね」

口を開き、状況が飲み込めていない様子。
別に隠していたわけではない。ここ四ヶ月は守沢が気を遣って話の話題に出さなかったから言わなかっただけだ。
自分で仕向けていた状況に気づけなかった守沢が滑稽で仕方なく、思わず吹き出してしまった。