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一緒にいる時間が長い分、少しの変化にも気づきやすい。この男なら、尚更。
それは承知済みで、指摘をされたようなことをしたのは、無駄であったと自覚している。ただ、少しでも時間を稼いで逃げたかっただけで。
守沢の聞き方が、異様に優しい。
私を変に思っているのと同時に、ずっと、心配してくれていたのだろうと感じた。
「……………」
口を開いた瞬間、テレビ画面に懐かしの映像が流れ始めた。
いつもなら開幕早々二人で盛り上がり、そのまま最後までテンションを崩さずに居られるのに。懐かしむ余裕は、皆無。盛り上がる気持ちも消滅している。
チャプター選択画面に移動しなくては。このままでは、最初から最後まで流し見する羽目になる。
そんな焦燥は一切湧いて来ない。その情が沸き起こるのは別の理由で、口を噤む引き金となった。
「……………」
いっそのこと、告げてしまおうか。
そんな気持ちに駆られ、口を開いた。
「そうか…まあ、いい」
「そんなに、重いことじゃないんだけど」
二人の声が重なった。瞳を合わせ、お互い遠慮するような素振りを見せた後、守沢は身を引いた。
「…私、あの………」
「うん、なんだ？」
守沢は「聞くぞ」という姿勢をとるようにして、私の様子を和かに見守っている。
その優しい目元を直視した瞬間、胸の中の情緒が反応し、溢れそうな想いに駆られた。
「………うあああああっ！！」
「！？」
「ちょっとトイレ！」
「んっ！？……え！？」
耐えきれない。
零れ落ちそうで堪え続けていた気持ちは、爆発を寸前にして、無意識に逃走し始めていた。
私の突発的な宣言と行動に、きっと守沢は、ぽかん、としているであろう。
ううう、と唸り唇を噛み締めながら、トイレの扉の前で頭を押さえ続け、その後は無駄に時が浪費していくのを待ち続けた。
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作者名：5674C | 作成日時：2022年7月18日 18時
