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「オッス!」
「えッ、お」
その日の午後。友達と駄弁っていたらいつの間にか夕方になっていた私の肩に、馴染みのある手の平が乗せられた。
手にかけていた自転車のハンドルが揺れる。
私の奇妙な発語に首を傾げるも、何事も無かったかのように守沢は会話を始めた。
「ちゃんと付いてるな、BLACK」
「え、あ、う、うん。ちゃんと…」
「今度は気をつけろよ?落とす度に汚れるのはAも嫌だろう?」
「も…もちろん」
滑らかさの無い会話でも守沢は構わず、話題を率先してきた。
「今朝話した昨日の特番の話だが、あれまだ続編があるらしいぞ。さっきSNSを見た時にたまたまそういうお知らせを見かけたんだ。
終わり方がスッキリしていたから油断していたが…反響がすごかったぞ!俺もその一人だ!」
変わらぬ笑顔で言い切った後は、私の方を向いて共感を求めてくる。
その視線に見透かされるような気がした私は、即座に首を回して守沢の目から離れた。
「…………そ、そうだ、ね」
正面を向きつつ手元を動かし、ミラーを調節するフリを繰り返す。
守沢の表情は分からないが、恐らく私の挙動を訝しげに見ているに違いなかった。
「…Aは見たか?というか、どうした?」
「な、何が?」
「いや、俺の気のせいかもしれないが…なんか…挙動が、変だな、と…」
「……………」
「…あの後何かあったのか?」
…………守沢は、いっつもそう。
私の見た目の変化には無関心なのに、いつも、いつもいつも、私の小っちゃな心境の変化には絶対に気づいてくる。
____見てくれているようで、見ていない。
「…う〜ん、BLACKもここにあるしなぁ…」
……この男、私の脳みそが光太郎一色だと思ってるな。
滅多にないことだが、大抵私が調子悪い時は仮面ライダーシリーズの何かに異変があった時なのだ。
仮面ライダーを演じていた俳優さんが炎上した時の私の様子が、最も適当な例である。
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作者名:5674C | 作成日時:2022年7月18日 18時