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「これからは気をつけろよ?大切なものだろう」
「うん…ほんとに、本当にありがとう」
「ははっ、何回でも言うんだな。耳にタコができそうだ」
「だって……」
「うむ、BLACKも無事でよかった。俺はそろそろ行くぞ、またな」
「あ」
「ん?」
私の元から離れようとする背中を見た瞬間、思わず出てきた声に守沢が振り向き、彼は先程よりも距離を縮めて向かってきた。
「どうした?」
「え、あいや……」
近づかれたことに戸惑いを感じ、反射的に足を後ろに下げてしまった。
「!?なんだなんだ、どうして身を引くっ!?」
「な…………なんでもないごめん、違うの…!」
自分でも、自分の行動に困惑している。
距離感が掴めていない彼の目の前へ、自分の手の平を見せて止まった。
なんで引き留めようとか思ったの私…!
いや、それよりも………ッ!
今すごく……………守沢の顔見れない…!
指の間から見えた、顔を顰める守沢の顔を凝視する。
良く整っているその顔は、作りだけでなく、彼の愚直な正義感が点在しているように思えた。
友達の言葉が再び脳内で鳴り響く。
「う…うぅうん……?まあ…いいか。用事も済んだことだし、何もないなら…ってああ!まずい!後輩を待たせたままだったっ!じゃあまたな、A!」
蒼白した顔を最後に、守沢は私に手を振って行ってしまった。
うん、と返事することしか出来ず、キーホルダーを手中に教室へ帰っていった。
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作者名:5674C | 作成日時:2022年7月18日 18時