終章 ページ43
夢のようだった。
果てしない道に、ひとつの正義という名の光が差し込まれた。
その一瞬で、私たちはどんな大切なものを感じ取れたのだろう。
彼がいなければ、私はここにいない。
私がいなければ、彼はここにいない。
____ああ、幸せだな。
「__…」
女は瞼の奥で巡った追憶に、脳を奪われたことに気がついた。
その後、自分の膝の上にある手に、馴染み深い手が重なっているのを見て、はっとする。
「おはよう」
その手の主は、彼だった。
Aの手を握って、ソファの横で並んで本を読んで佇む、千秋だ。
Aは頭上の時計を探す。見れば、時刻は夕方をとっくに過ぎていた。
今日は平日だったかと、焦りだし、自分がうたた寝をして疲れている千秋を労えなかったことに反省の情が流れ込んだ。
「待ってごめん!寝ちゃってた!仕事終わったの?あぁ〜どうしよ!夕飯、すぐ__」
「ははっ、待て待て、そう焦るな」
「もう、起こしてよ!」
「かわいい寝顔だったから、起こせなかった」
Aが憤慨しても、千秋は躊躇いのない言葉で覆す。Aはぐっ、と言葉に詰まり、千秋に鋭い視線を送ることしかできなかった。
「なんだ?」
「……怒ってるんだからね、千秋のために」
くすりと笑って余裕の表情でいる千秋に、Aはさらに不機嫌になる。
そんな顔ですら愛おしい千秋は笑いながら、悪かった悪かった、と二度続けて言った。
全く…とぼやきながら、Aはソファから腰を浮かす。
「あー…A、ちょっと待ってくれ」
「?なに?」
口籠る千秋の様子に、Aは小首を傾げた。
やがて千秋は、頬杖をついて何かを考えるようにしながら、自分のポケットに手を入れた。
「………え?」
72人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時