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「……こ、困るっ、そんな泣かれてしまっては…」


男がそう言っても、泣き慣れていない私は子供同等に泣きじゃくった。
男は泣き声を上げる私の様子に、人目を気にし始める。周りを見渡し、人が少ないことを確認してから私に語りかけた。


「…立てますか?
…あの、俺で良かったら、あそこの公園で話聞きます」


その言葉で、涙に拍車がかかってしまう。

何とか堪えた私は男の気持ちを無下にしないよう立ち上がり、男に促されるままふらついた脚を動かした。

只事ではないと思ってくれたのだろうか。
自分の背中に添えられた手つきは、異様に優しい。


こんなことされたら、疑ってしまう。
良くない人情だ。
私、人間不信染みているな。
いつから私は、こんなに汚くなったのか。


それでも彼の言葉は、私の心を洗い流してくれるほど強力なパワーがある気がした。







公園のベンチに座り、男が走って買ってきてくれたお茶を受け取った。

私は何度もお辞儀をした。ごめんなさい、ごめんなさい、ありがとうございます、と。
「いい」と言われても、私が満足するまで頭を下げた。
恥ずかしながら、その度に涙ぐんでいた。

そんな私に、彼は何度も優しい声かけをしてくれる。

こんな優しい人本当に存在するのかと、この世界の真理が怪しくなるほど、彼の心は美しい。


「……えっと、聞いてもいいか?」


互いの年齢を告げ、同い年だと知った彼はフランクになった。
彼の問いかけに首肯する。


「どうして、あんな道端に座り込んでいたんだ?」


私は一人暮らししてからの経略を包み隠さず話した。

親のこと、仕事のこと、放浪生活のこと、何でも話した。

彼からは何でも受け入れるという心持ちを感じ、つい、甘えてしまった。出会って数分なのに、全て吐露してしまった。

どうすべきかの判断力もなかったんだと思う。彼が差し出した『助太刀』という手を、気づいた時には掴んでいたという状況だった。



つらつらと述べていくうちに、自分は過ちを犯したのだとを自覚した。


親に反発したのがいけなかった。


仕事を辞めたのがいけなかった。


理想的な自由に憧れて、全てを捨てたのがいけなかった。



沢山の後悔が過ぎり、自己嫌悪に陥る。
彼に話していくうちに声の調子は急降し、声が小さくなった。



それでも、彼が私の話を親身になって聞いてくれているのを感じた。

☆→←☆



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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時

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