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その声が聞こえた瞬間、反射的に跳ね上がった。警察官かと思ったからだ。

暗くて把握できない男の声に、身を捩らせる。

やがて接近してきた男は、防弾チョッキも、懐中電灯も持っていない。
鍔付きの帽子を被り、小型リュックを肩にかけたラフな格好だった。

その男は、好青年と言う代名詞に相応しかった。

私は自分の姿が見られる前に逃げようとした。
しかし、すくむ脚を立たせようとするも立たない。尻餅をついたまま立ち上がれず、その場に呆けたままになった。

好青年と瞳が重なる。

なんて、端正な顔なんだ。
背丈も高く、小顔で、なにより情熱がある。

瞳の中心が放つのはまさしく、正義だ。


「……あの」


男に顔を覗き込まれ、呆然としていた自分に気づいた。羞恥の念が身を纏い、視線を不意に逸らした。


「……何をしてるんです?」


故意に電灯の灯りのない道端に座り込み、空を見上げていた女の姿に向けるには当然の疑問である。

暫く対話の仕方を忘れていた私は、口を開こうとも開けなかった。
男は首を傾げ、私の目の前に座り込む。
まるで幼児への対応のよう。身寄りのなく不安気な私は、彼からしたらそう見えたのかもしれない。
声は相変わらず出ない。手と脚の行き場はなくなり、たじろうばかりだった。


「……大人、だなぁ」


うーん、と唸る彼の表情が眼前に迫った。
薄暗くても分かる立派な顔立ちに胸が鼓動を打ち、頭頂部から爪先まで、隅なく自分の熱を感じる。
男は私を見つめた後、身なりを見てさらに唸り出した。


「こんな夜遅くに、危ないですよ。
夜って物騒なんですから、女の人は特に気をつけた方がいいと思います」


不潔な見た目から、地方から来た異邦人だと思われただろうか。丁寧な物腰は、他者の応対に小慣れているように思われた。
男は、なかなか口を割らない私に顔を顰めている。
さすがに奇妙だと感じたらしい。自身のスマホを手に取り出した。


「……なんなら、警察に___」
「!!!ダメ!!」


今最も恐れている警察。そして、家、親、と、連想した。
自分でも絶対に出ないだろうと思っていた声が、思ったよりも大きな声で男の手を止める。
男はびくりと跳ね上がり、胸を押さえていた。


「び!びっくりした…なんだ、喋れるのか……」


いくら振り絞っても出ないと思っていた。
やっと出せた感覚に、ほっ、と焦る男を無視して一息つく。


「…何かあったんですか?」


無理して答えなくてもいい、と男は加えて言った。

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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時

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