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「どうして、そんなこと、言うのよ…」
「え…?」
「お母さん、貴方に悪いことしたの?
そんなことないわよね?社会で正しいことは家族にも正しい。そうでしょ?A」
「……いや」
「お母さんは貴方が大人になって独り立ちしても困らないように習い事もさせたし、塾にも行かせた。
一体何が不満なの?全部やってあげたじゃない。これ以上、あなたは何が欲しいの?」
母はそう私に迫ってきた。
しかしそんな怒りを感じても、屈することはなかった。
今まで受けてきたどうにもならない苦痛に比べれば、こんなもの、ちっぽけであると感じたからだ。
「___自由だよ」
自由が欲しい。
迷いなく告げる。母は目を見開いて、私を見つめた。
「……自由、って…お母さんは、貴方にあげてきたわよ!?
大人になってから自由になれるために役立つことをずっとしてあげてきたじゃない!」
「でもそれは、私の望んでることじゃない!」
「産まれたては何も知らないのよ!いい!?産んだ私が責任を持って子供を立派に育てるのは、親の役目なのよ!」
「役目って…!親の役目って、そうじゃない!
子供の意志を受け入れてくれるのが一番大切でしょ!?
私が望んでいないことをやらせて…それはお母さんのやってほしいことを私がやってるだけ!
私のことなんて何も考えてやってないじゃん!」
すかさず反論すれば、再び反論が返ってくる。
その後も論争が続き、お互いの気持ちが激しくぶつかり合った。
どうして、理解してくれないのだろう。
お母さんは、私の気持ちを本当に考えてくれているのだろうか。
子供ながらの純粋な想いが募っていても、自己主張が苦手だった私が言うことはちぐはぐで、その時はどうすることも出来なかったと思う。
言い合いの言葉の途中で、仕事の都合でなかなか家に帰らない父親が珍しく帰宅し、口論を止められ、場は物理攻撃に発展せずに事なきを得た。
いつも母の尻に敷かれている父は、紛議している私達を説得し、互いの意見を尊重させようと仲介に入ってくれる。が、それでも互いの怒りは収まりきらない。
私の言葉は母を逆上させ、ついには汚言まで吐き捨てられるようになった。
「許さないわよ、就職なんて!」
最後に吐き捨てた母の言葉に、情は一切揺らがなかった。
もう、決めていたから。
私は私の道を行く。
なんと言われようが、止められようが、私は私を信じて突き通してみせる。
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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時