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「千秋?」
Aが例の如く千秋の後に湯に浸かりリビングに戻ってくると、普段ならテレビを見ていることが多い千秋の姿が見当たらない。
寝室に行ったのかと寝室の扉に向かったが、ソファの上で横になってうたた寝をしている千秋を見つけ歩みを止めた。
やれやれ、と言いたげに肩を下ろし、横たわっている千秋の頭上に、起こさないようゆっくりと座り込む。
小さく寝息を立てている彼の姿から、赤ん坊が連想されてきたAはくすくすと口元を抑えつつ、千秋の頭を優しく撫でた。
寝ている顔を覗き込むと見えたのはうっすらと黒くなっている目の下の隈。Aの心と顔が沈む。
こんな隈、千秋には似合わないよね…。
胸の辺りが沼に浸かるような気分に浸ったが、撫でる手は止めなかった。
アイドルで、人気者で、誰からも好かれる。どこにいったって上手く乗り切る彼が、どうして自分をここに置いてくれるのだろうか。
千秋の隈は努力の証であることを悟ったAは、突然、気持ちのベクトルが下がり始めた。
私なんか、不相応だ。
自分には勿体ないぐらいの魅力を秘めている彼に、自分は負担なのではないのかと、時々に不安になってくる。
Aは、自分が自分のこと嫌いなのを自覚していた。
私は私が嫌いなのに、なぜ千秋は、私のことを好いてくれるのだろう。
時たまに、そんなことを考えてしまう。
千秋に知られたら怒られてしまう。
分かっているのに、自身の性根は厄介で考えることをやめられない。
千秋の目元に触れるか触れないかの距離で触れ、目に刺さりそうな前髪を横へソフトに払い除ける。
収集つかない気持ちが、指先に表れているように見えた。
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5674C(プロフ) - Umiさん» 嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月4日 10時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - めっちゃキュンキュンしてしまいます(˶'ᵕ'˶) (2022年3月3日 16時) (レス) id: a9ba311e8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5674C | 作成日時:2021年11月17日 2時