いちごみるく (ページ39)

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家の近くの海辺。

君の面影がまたチラつく

真っ白い肌にどこか海が不似合いな君が

暑いからと長い髪を薄い青色のシュシュでまとめていた君が

あの運命の日の少し張り切った白いワンピースの君が。

それが頭をよぎる度に嫌気がさすのに今日もまた僕はここに来た

君とお揃いのコンバースを履いて

君が一番大切にしていた本を持って

そして君が作ってくれた四葉のクローバーの栞をはさんである

落ちている貝殻はいちいちキラキラと光って美しい。

全部全部嫌いなもののはずなのにまるで中毒のように気づけばそれらは視界に映る。

いや、俺が移してるのかもしれない

ふわりと香る病室の匂い

｢海…なのに…なんで？｣

塩の匂いしかしないはずのこの場所で、どうしてあんな匂いがするのか。

その答えなんて一つだけ

最後のデートはここだった

あの日、初めて君の病気のことを知った僕はそれからの数週間後、君が弱るのをただ見ることしか出来なかった。

どうしてもっと大切にできなかった？

もっと隣にいて挙げれなかった？

あぁ、嫌いなものが増えた理由が分かった

自分に責任を感じて心が重くなるからだ。

『心配かけたくなかったの…』

優しい君はそう言うけど、一番残酷なのは隠し事だよ

どうしようもないのに守れなかった

どうすれば僕は君の元に行けるんだろう。

また君の笑顔を見れるんだろう

つー

っと涙が頬を掠める。

やっぱり、海は嫌いだ。