8話 ページ9
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「あ、愛の巣……?」
「ベルモット……今すぐ
「あら怖い、ただの冗談よ。本気にしないで。」
一瞬ピリッと張り詰めた空気になったが、結局は何も起こらずに済んだ。……やっぱりジンさんって少し怖いかも。でも何故だか全然嫌いになれなかった。命の恩人でもあるし。
その後は特に会話もなく歩いていると、あるマンションの前でベルモットさんが止まった。住宅街の中にある7階建てのマンション。エレベーターで5階まで上がって、着いたのは502号室の部屋。ベルモットさんが取り出したカードキーを差し込むと、ガチャと部屋のドアが開いた。
「さぁ、上がって」
「……お邪魔します」
言われるまま中に入ると、そこはなんの変哲も無いマンションの一室。ベルモットさんが何故ここに私を連れてきたのか全く意図が読めないまま、彼女は私にカードキーを渡した。
「冷蔵庫にはお酒しか入ってないけど、この部屋を好きに使ってくれて構わないわ。」
「えっ、」
「そうね……電気代とかは気にしないで私が払うから。」
「へ」
「あと……他に言う事あったかしら?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
つらつらと述べられる話に、頭は追いついていないものの何とか言葉を発することはできた。
というより、今のベルモットさんの話にはおかしな点が多すぎる。まるで私がここで生活するような口振りだ。いくら私が家なき子だからって、ベルモットさんがここまでしてくれる義理は無いはずだ。なのに、何で……、
「……何で……私なんかに、」
「あら、今さら気づいたの?」
「え」
「確かに、私たちが貴女にここまでしてあげる義理も道理も無いわね。」
「……」
「でも、生きるために必死に足掻いてる貴女を見てると何故だか助けたくなるの……。そうでしょう?ジン。」
「……俺はこの女の物置になる部屋が無駄に思っただけだ。」
その言葉でじんわり心に何かが染み渡った気がした。それこそ出会いは最悪だったけれど、あの場所で彼に出会った事に意味があったんだと実感する。まずい、鼻がジーンとしてきた。思わず溢れないように、必死で耐えた。
やめて、それ以上優しい言葉を掛けないで。
「それに、人の親切は拒むものじゃなくて受け取るものよ?その人に恥をかかせないためにもね。」
「……っ、」
1粒、2粒、涙がボロボロと頬に流れる感覚がした。流れ出したらもう止まらない、大雨のように水が体内から溢れ出した。
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高原(プロフ) - 海鼎さん» うわぁー!再びコメントありがとうございます!頑張ります! (2018年1月27日 21時) (レス) id: 07676443a0 (このIDを非表示/違反報告)
海鼎 - イラストがうますぎて泣きそうです...!更新頑張ってください! (2018年1月27日 20時) (レス) id: 489d0b19f8 (このIDを非表示/違反報告)
高原(プロフ) - 馨さん» そうなのです……イラストは私が描かせて頂きました!そう言って貰えて光栄です!頑張ります! (2018年1月12日 8時) (レス) id: 07676443a0 (このIDを非表示/違反報告)
馨 - イラストは作者様が描かれたのでしょうか...?!!? とってもお上手で設定のページで数分ほど硬直しました.....あの絵だけで30分は語れる自信が...(( 、お話も大好きです!!! トリップモノの中でも着目できるくらい...!!!(?) (2018年1月11日 20時) (レス) id: e10e5449fb (このIDを非表示/違反報告)
海鼎 - フサァ....(髪の毛が飛んでいく音) (2018年1月4日 22時) (レス) id: ecba555ceb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高原 | 作成日時:2017年12月25日 1時