神隠し (ページ11)

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佐久間 side

うん、やっぱり昨日の美味しそうな匂いは彼女だ。

傷が治り始めているからなのか、昨日のようなあの美味しそうな匂いはほとんどしなかった。

鼻が効くから見つけられたけど、昨日は食べないように我慢するのが結構大変だった。

ケーキ屋に入っていく彼女の後ろ姿をガードレールに寄りかかって眺める。

昨日のふっかの話だと、彼女は半妖らしい。

人間は好きじゃない。

関わってあまりいい思いをしたことないし。

なにより、阿部ちゃんにあんなことしたやつらだ。

阿部ちゃんはもういいよ、大丈夫って笑っていってたけど。

どうして。

俺は大事なものを傷つけられたのに。

なんであいつらだけ。

彼女は妖怪が見えるってことはきっと阿部ちゃんとおんなじ苦労を知ってる。

彼女はどんな人なんだろう。

もし、阿部ちゃんに酷いことする人だったら、どうしよ。

...美味しそうだったし、食べてもいいかな？

でもなー、勝手に色々食べて阿部ちゃんに怒られるのもなー。

昨日は美味しそうな匂いのする彼女を食べるのを我慢するために、その辺の妖怪を片っ端から食べてきたから怒られることもなかったけど、いつも勝手に食べるとちょー怒るからなあ。

お腹壊すでしょ！ってさ。

もー、佐久間さんもいい大人なのに、全く失礼なんだから。

人間は嫌いだけど、彼女はどうだろうか。