照くん、離れてください！ (ページ9)

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アラームが鳴って、即止めて、また眠りにつく。

今日は、講義もなければバイトもないから、

久しぶりにゆっくり出来る日。

しばらくして目がうっすら覚めてきて、

スマホを見れば、11時少し過ぎたところ。

父親の血が混じってるせいか、なんとなくお腹は空くわけで。

シリアルにチョコソースを一本まるまるかけてから、
牛乳を注いで、温めたバターを上からかける。

友達には【具合悪い】って言われたけど、
これが私にはぴったりの朝食なんです。

ベッドサイドに飾った、綺麗なバラの花束。

もちろん、こんな素敵なものくれるのは、
1人しかいない。

私は照くんが好きで、大好きで、
それ故に彼に近づけない。

照くんは、たぶんね、きっとね、
私のこと、少しでも好きでいてくれてて、

あの時ついた嘘も、近づかないでって言葉も、

全部ちゃんと守ってくれてる。

嬉しくて仕方ないのに、胸が苦しくてしょうがない。

ぽた、と落ちた涙。

黒い色した水滴に、余計に涙が止まらなくなる。

"僕の仲良い先輩が喫茶店のマスターやってるんだ"

"Aちゃんには特別に教えてあげる。内緒ね？"

なんでこのタイミングなんだかよくわからないけど、

こっそり教えてくれた阿部くんの声が頭に浮かんだ。

阿部亮平。

一瞬、"こっち"の人かと思ったくらい、
スタイル抜群でビジュアルも最高。

成績上位者の常連なのに、分け隔てなく優しいから、

ちょっとだけ、その優しさに頼りたくなっちゃうんだ。

本人は煙草は吸わないはずなのに、
スモーキーな匂いがして、案外オトナな雰囲気。

可愛いキャラとのギャップでこっちもクラクラする。

"人は見た目が9割"って、ほんとにそうなのかな。

"俺でよければ、なんでも話聞くから"

『…いいよね、今日くらい』

身支度整える気力もなくて、

フード付きのパーカーにスキニージーンズ、

メイクもパウダーファンデと、
ほんのり色づくピンクのティントだけ。

ハネだけ直して、あとはキャップ被っておわり。

普段使わないリュックを背負って、

ヒールブーツはやめて、

おろしたてのスニーカーで外へ出た。