照くん、離れてください！ (ページ23)

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"Aはおれがまもるからね"

5歳か、多分そこらへんの頃だったと思う。

"れん、れん、どこ？たすけて"

人とは'違う'ことを、感じ始めた頃

袖が真っ黒に染まって、自分が'異質'だと気づいた頃

いつだってそばにいてくれたのは、
目黒…、いや、蓮、だった

"おれたちはずっといっしょだよ"

"おれがAをまもる"

「…A？」

浮かんでくる意識の中で、ゆっくり目を開けると、

潤んだ瞳で、私を見つめる蓮がいた。

『…夢見た。懐かしい夢』

いつもからかってばっかりで、

同族として、
幼馴染として、

本当に最悪な奴だって思ってた。

だけど、本当は、

誰よりも昔から、私のことを守ってくれたのは、

蓮だったんだよね。

『…ごめんね、蓮』

そっと、手を伸ばして、

蓮の頬に触れて、包み込む。

『…全部私のせいだね、』

堪えたはずの涙が、ぽろり、頬を伝った。

「…そんなこと、言わせたくなかった」

吸い込まれそうなくらい、綺麗な瞳が私を捉える。

スッと伸びた指先が、

じわりと感じてた痛みを和らげるようで。

「ごめん。俺、Aのこと、傷つけた。

こんなこと、絶対したくなかったのに」

赤黒いその跡をなぞったあと、

紅く染まったその唇が、優しくそこを刺激する。

何でも受け入れると言ってくれたあなた

けど、もうこうなってしまったら、

私があなたを受け入れられることは、ない

蓮が私を守りたいように、

私も、あなたを守りたいから

『…蓮』

"帰ろう、私たちのいるべき場所に"

照くん

あなたのことが、大好きでした

あなたのことを守りたいから、

どうか、私のことはもう忘れてね

私があなたの命を奪ってしまう前に

あの日以来、私と蓮は大学に行くのを辞めた。

雲一つない、綺麗で嫌いな満月を眺めながら、

溢れ出る涙をそのままにして、

決して潤うことのない喉の渇きに嫌気がさす。

それから、愛しいあなたの名前を見たくなくて、

何度も何度も鳴り止まない通知音を、

そっと切った。