照くん、離れてください！ (ページ21)

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俺が気づかないわけがない。

俺が、この俺が。

…Aをずっと見てきた、俺が。

Aが倒れたあの日、岩本くんはずっと部屋の前で突っ立っていた。

…目眩がするくらい甘い。

「…何か用すか」

俺と目が合って、ほんの少し揺れた。

「…別に」

「別にって、笑、心配じゃないんすか、A」

また俺を見ると、立ち込める甘い匂いが強くなる。

「…あーま。うまそっすね、岩本くん。笑」

どういう意味だよそれ、なんて言われたけど教えてやんねえ。

どうせ、時期にわかんだろ。

…当たってほしくもない予想が
大当たりしてしまって。

「目黒、お前大丈夫か？こけてんぞ」

「…しょっぴーに言われたくないっす」

Aのこと、すげえ好きだったんだって、気がついて。

「…お前おっせえんだよ」

「は？」

「お前はどうしたいの」

「だからなんなんすか」

まあ、本当はちゃんとわかってたけど、

俺、今さらどうしたいんだろ。

『目黒、また明日ね』

「うん、また明日」

後ろ姿を見つめながら、溜息が自然と出る。

体温が上がってるからか、ほんのり色づいた頬、

これは俺にしかわかんないけど、いいニオイがする。

…誰だって恋愛中ってわかるわ。

岩本くんに想い、伝えられたんだ、おめでとう。

そう、素直に思う気持ちと、

ふざけんな、Aは俺のなんだよ、触れるんじゃねえ！

そう、悔しく思う気持ちが混ざりあって、
もう、よくわかんねえ。

俺バカだし、元々自分の気持ちに鈍感なせいで

自分がどれだけしんどい思いしてんのか、気づけなくて

「おい…目黒いい加減にしろよ」

「…なにがすか」

「何がじゃねえよ。お前病人みたいだぞ」

いくら腹が減らないっていったって、
飲まず食わずで過ごすにも限界があった。

「腹減らないんで、まじで。」

「Aちゃんと話したの？」

「…いや」

「…心配してた。最近避けられてるし、
目黒をよろしくお願いします！…って。」

は、俺の心配？

…誰のせいだと思ってんだよ

「じゃあ、あいつに言っといてください。

もう俺に構うなって。」

ただ逃げたかったのかもしれない。

Aと、

自分の気持ちと、向き合うことが、

怖かったのかもしれない。

それで、とうとう、俺は、

大切な彼女を傷つけてしまった。