87話(´ー`) ページ10
皿の上からいなくなったうさぎ。ビニール袋に入っている赤く熟したりんごを指さした。
「脊髄を損傷しました。そのせいで、片方の足は感覚もないし動かなくて、もう片方は感覚はあるんですけど動かせないんです。」
ビニール袋からりんごを取り出し、フルーツ用の小さな包丁で丁寧に切り始めた。その作業をしているのはもちろん及川さん。
「…半身不随よりはまだいい方、とは言いにくいね。」
次々に完成していくうさぎと、ゴミ箱に落ちていく赤く薄い皮を交互に見る。どこか手慣れているような気がする。
「足が動かないのは、まあショックですね。」
うさぎりんごの生産が、ピタリと止まった。皿の上には私が食べかけにしたフォークの刺さったりんごと、手のつけられていないうさぎりんご。
「…でも、まだ右足は感覚があるから可能性があるんです。左足は多分もう動かない…。」
及川さんが、俯いたまま顔をあげない。だけど私は話し続ける。うさぎりんごに手をつけないまま。
「ショックって言ってもそうでもないですよ。可能性がないわけじゃないんですから。まだ可能性があるんです、なら別に…」
食べかけたうさぎりんごに刺さるフォークに手を伸ばした。でもその手は、フォークを掴まず、違う手に掴まれた。
「…冗談で言ってるなら、もうやめな」
及川さんの大きな手が私の腕を強く掴む。少し痛い。
「何がですか。何が冗談だって言うんですか。」
情けないほどムキになって答える。私の腕を掴む及川さんの手の強さが更に強くなった。
放して、そう言おうとした。でも、そう言う前に腕がちぎれるほどの勢いで引っ張られた。
目の前には、及川さんの顔があった。
「さっきまでの言葉、全部だよ。自分を偽るな。」
相手を射るような目は、私の溜め込んで吐き出すまいと必死に我慢していた思いの栓を抜いた。
「…っ私、だって…言いたくていってるんわけじゃない…」
もう開けたら止まらない。あふれだす思いは私の体ごと流れていってしまいそうだった。
頭の中をぐるぐると周り、思いは目からあふれ出る。
「冗談でも…っ言わないと…気が、おかしくなる…!!」
叫んでいた。内に秘めていたはずの思いを、目の前の相手にすがりつきながら。
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あおインコ(プロフ) - あやの♪さん» ありがとうございます!!まさに青春です…。もちろん精一杯楽しみたいと思います!!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年4月8日 7時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あやの♪(プロフ) - 高校進学おめでとうございます!青春真っ只中って感じですね(*´∀`*)高校生活楽しんでくださいね! (2017年4月8日 1時) (レス) id: ece222c786 (このIDを非表示/違反報告)
あおインコ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。待っていてくださり本当にありがとうございました。これからまた更新再開しますので、よろしくお願いしますね(*^^*) (2017年3月2日 14時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あい - 長文でごめんなさい。 (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか僕が読んでるやつに更新停止の作品が異様に多いきがしてならないのですが。しかも受験生が多い!とまあ、愚痴はこれぐらいにして早く復帰してくださいね。結構夢主と及川さんの絡みが好きなので!待ってます! (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおインコ | 作成日時:2016年7月14日 18時