107話\(;' ')/ ページ39
時間が過ぎるのが遅く感じた。
それは沈黙のせいでもあったし、私の緊張と焦りが入り交じった心のせいでもあった。
雨の音は止まない。私の胸の音とテンポを合わせている。
心臓が内側から胸板を叩く。体育館の入口で車椅子に座りながら、赤面する頬は熱くなっていく。
及川さんの目はじっと私を見つめていた。
沈黙が辛い。何か言ってほしい。気まずい。
何か、何か起きてくれないだろうか。なんでもいい、雷落ちるでも、停電でも、誰かが来るでも、なんでもいいから。
「単刀直入にもほどがあるだろ。」
沈黙が破られた、私は顔を上げて及川さんのいる方を見た。彼は私のところへ歩んでくる。
床の軋む音が徐々に近くなってきて、後ずさりのできない私は体を引いた。
もう目の前まで来て、立ち上がれば体が触れてしまう距離。
「あ、あの…単刀直入すぎたのは…その、申し訳なかったんですけど…」
「…それ以外、伝え方…わからなかったから…」
ばらばらな言葉を紡いでいく。もうこれ以上の言葉が思い浮かばない。
自分らしくない、戸惑いとはっきりしない喋り方がぎこちない。
「…及川さん…あの、私……!!」
突然、ふわりと体が宙に舞うような感覚がした。
重い体が、重力のなくなった空間に浮いているような、自分の意志とは関係なく浮いた。
でも、体の隅々から感じる温もりが、私に全てを理解させた。
シトラスのつんとした香りと少し混じった汗の匂いが鼻をかすめる。
それは大きく暖かな、人の温もり。
ほかの誰でもない。私の目の前にいる。
「…やっと言った。」
背中をきつく抱きしめられる。
地面にほんの僅かについたつま先まで、その声が私の内を巡る。
「…俺も、好きだよ。」
胸を打つ鼓動は、産まれたての赤ん坊のように早く強い。お互いの右胸に叩きつけるような、強く、大きな音。
「…知ってます。」
腕を及川さんの背中に回す。
大きな背中に私の腕は回りきらない。服を掴むようにして、抱きつく。
ああ、そうか。
やっぱり私はこの人が好きだ。
「及川さん、好きです。」
私はもう一度言った。
シトラスの香りが鼻の先に強く感じられた。
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あおインコ(プロフ) - あやの♪さん» ありがとうございます!!まさに青春です…。もちろん精一杯楽しみたいと思います!!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年4月8日 7時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あやの♪(プロフ) - 高校進学おめでとうございます!青春真っ只中って感じですね(*´∀`*)高校生活楽しんでくださいね! (2017年4月8日 1時) (レス) id: ece222c786 (このIDを非表示/違反報告)
あおインコ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。待っていてくださり本当にありがとうございました。これからまた更新再開しますので、よろしくお願いしますね(*^^*) (2017年3月2日 14時) (レス) id: 2941e47bdf (このIDを非表示/違反報告)
あい - 長文でごめんなさい。 (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか僕が読んでるやつに更新停止の作品が異様に多いきがしてならないのですが。しかも受験生が多い!とまあ、愚痴はこれぐらいにして早く復帰してくださいね。結構夢主と及川さんの絡みが好きなので!待ってます! (2017年3月2日 1時) (レス) id: 65300ee319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおインコ | 作成日時:2016年7月14日 18時