１３６話 ページ1
高校は青春の時間。人の長い人生の中の、たった三年間という短い時間をそう呼ぶ。
それはとても大切な時間で、どう過ごすのかは自分が決める。部活に励む、勉学に励む、恋愛をする…。
そして高校には、ひとつ重要なイベントがある。
「文化祭ですよ、Aちゃん！！」
例の如く、しずきさんが私の机の前で、私の机を両腕で押すようにしながら、顔を突き出してくる。
「…そうですね。」
「えっ、なにその反応！まさか、楽しみじゃないの！？」
なんとも言えない反応しか出来ないのは、楽しみではないからとは言い切りにくい。実際まあ、しずきさんほど楽しみレベルは高くない。
「楽しみじゃなくはないんですけど…」
何か食べているように口をもごもごさせ、目を逸らす。言い難い。言ったら余計面倒が増える気がする。
「…けど？」
「…。」
凝視されているからか、変に汗がでてきた。悪いことをしているわけではないのだけれど、後ろめたさが背中を這ってくる。
沈黙が辛い。何度か経験したこの感覚を久しいな、と感じるのが、また辛い。
「…あっ！！わかった！！」
急に顔を遠ざけたと思うと、にやりと笑い、また顔を近づけてきた。今度はさっきよりも近く、ひそひそ話をするような口調で話す。
「…及川さん、誘えてないんでしょ？」
「…は…えっ」
肩びくっと上下した。「蝿？」としずきさんは一度首を傾げる。
「…まあ、はぁ、そうですね。」
「何その曖昧な返し！まあいいよ。でもAちゃんがそんな可愛い悩みを抱えておるとはなぁ…」
にやけ顔のまま、文化祭の私と及川さんのスケジュールを勝手に話し始めた。しずきさんの頭の中ではもう、及川さんと回ることになっているらしい。
(それは…思いつかなかったな。)
正直、文化祭云々に関して思っていることは、別にある。のだけれど、しずきさんが一人で盛り上がっているから、まあそういうことにしておこう。
「…一緒に、文化祭…か。」
悪くないかな。
小さな青春の風が、私にも訪れようとしている…
かもしれない。
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作者名：あおインコ | 作成日時：2018年11月26日 22時
