１４２話 ページ7
「好きなっ…女の子…あははっ…」
おかしくなってしまって、私はお腹を抱えて笑ってしまう。
嬉しさと、気恥ずかしさとで顔は赤い。こんなに笑うのは、いつぶりだろう。
「Aちゃん？なんでそんなに笑ってるの！？ねぇ！？」
俺すごい恥ずかしいよ！？と、及川さんも顔を赤くして、私の顔を覗き込んでいる。
「…あはは…はぁ…」
「…落ち着いた？」
「…まぁ、はい…ふふ」
私が感じたのは、嬉しさと、気恥ずかしさと、それと。
「…？Aちゃん？なんで俺の顔両手で挟むの…？」
「…わかってるくせに。」
唇にやわらかい感覚。目の前にはまた驚いた顔の及川さん。
「実は、私にも好きな男の人がいるんです。」
少し固めな頬が、この人を男だと意識させる。
「ナルシストで、女たらしで、自意識過剰で、顔だけは良くて、我が儘で、顔は良くて…」
「まって！そのままだと俺、顔だけの男ってことになる……むぅ！？」
頬を思い切り挟んで、たこみたいな口にさせる。
「話は最後まで聞いてください。」
「…。」
「返事は？」
「…ふぁい。」
少し吹き出しそうになったのを堪えて、及川さんの目をみる。
「…まぁ、世にいうクソ野郎なんです。」
眉をひそめて、何か言おうとした及川さんにかぶせるように、ぐっと顔を近づける。
「それでも、私にとっては世界一なんです。…あなたが。」
頬から手を放し、ずっと見続けていた目をそらす。
「以上です。異論、反論は受け付けませ…んっ！？」
同じようなシチュエーション。でも少し違っていて、今度は抱きしめられ、そのまま一緒にベッドに倒れこむ。
いつものベッドに二人で向かい合い、抱き合いながら横になる。
「俺もね…」
ぎゅうっと、背中に回った腕に力が入るのがわかった。
「頑固で、無表情で、生意気で、照れ屋で、…他にも沢山あるよ。あげたらきりがないくらい。」
「そのくらい。たくさん君を想ってる。嫌な所はもちろん嫌だけど、それ以上に君の好きな所が好きすぎるんだよ。」
言葉はでなかった。そのかわり、二人で大笑いして、そのまま笑いつかれて眠ってしまった。
そのくらいには幸せを感じた。
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作者名：あおインコ | 作成日時：2018年11月26日 22時
