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140話 ページ5

私の家、もといマンションの前で、私と及川さんは立ち止まり少し話をしている。









言うまでもなく文化祭について。









「及川さん、デレましたね。」









何秒か前の言葉を拾って、にやりと返答する。









「別に、本心だから。」









今度は及川さんが、やり返しだと言わんばかりににやりと笑う。









その表情を歯がゆく感じてしまうのを、ぐっと堪える。









「…話戻りますけど。」









早口にそう言ったのも、どうにもこのまま黙っていたら、及川さんに負ける気がしたから。









「私から、お願いするって貴重なんです。」









そう、とても貴重なんです。珍しいんです。









なんせ私は欲もなく、決して怒らず、さざ波すらたてない穏やかな人間ですから。









「…だから、私はあまり、いや、確かに女子の目は少し怖いですけど。」









私らしくない。









言いたいことがあるのに、それを言わないように違う言葉で隠してしまう。迷っているのか。









「…その、だからですね。」









だんだん頬が熱くなるのを感じる。今まで何度も起きた事だけど、少し違うような。









じわじわと、体温が上がるように。









「…私も、一緒にいたいんです。」









地面にぽつりと落とすような、小さな声だった。









この人といると、いつもこうなる。









自分で言わないようなことを、つい言ってしまう。









頬が熱い。赤くなってるんだろうな。









軽く俯いた顔。すると急に、両頬を掌で挟まれた。









「え…。」









驚いて目線を上げた。









視界に映った及川さんの顔は、満足そうで、口角がとてもよく上がっている。








「うん。知ってるよ。」









綺麗な笑顔。ただ、漠然とそう感じた。









「じゃあ、一緒にいよう。」









満足そうに笑っているようだけど、どこか嬉しそうにも感じる。









「女子から守ってくださいね。私か弱いので。 」









「断言はできないなぁ…」









控えめな笑い事が、街灯に照らされただけの暗い道に響いた。









「あ、そうだ。一緒にいるってことでさ。」









及川さんは私の後ろを指さし、軽く首を傾げた。









「今日。泊まってもいい?」









急すぎる話に、私の頭は追いつかなかった。

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設定タグ:ハイキュー , 黒バス , 青春   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:あおインコ | 作成日時:2018年11月26日 22時

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