危ない蜜２【歌い手短編小説】

花嫁争奪戦 : うらさかそらまふ天☆２ ページ45

『は、離して…！』




「だーめ、折角捕まえたんだもん」





我に帰って胸板を押したけど


坂田さんは愛しそうに私を下ろして

前からぎゅっと捕まえる。





「僕のお姫様…」





『っあ……』






耳元で息を吹き掛けるようにそう言われて

私は思わず反応を示してしまう。



背筋に痺れが走るのを感じた。






「A、だいすき」





『ちょっ、ダメ…！』






そのまま耳、首筋、頬とキスをされて


とうとう唇を
奪われようとした時だった。





「さかたー、甘いよ」








「なっ…！？」





『…？
ひゃあ…っ！？』






どこからともなく声が聞こえて、


きょろきょろと辺りを見渡していると



突然身体に巻き付けられた緑の鎖。





そのまま上にグイッと引き上げられて、

驚いて目を瞑ると


身体を包み込んだのは
柔らかくてふわりとした感触。





「坂田ダメだよ
キスにそんな時間かけちゃ」





「うらさん…！」






うらさん？



目をあけると、

飛び飲んできたのは
茶髪の王子。



うらた王子。





「するならさー、
こうやって…」





『ひゃっ！？』




うらたさんがそういうのと同時に

トンッ、と、壁に身体を押し付けられた。





「…てっとり早くやらないとね？」




『あっ…！』





チュッ



唇に何か当たる。



あぁ、キス、されちゃったのか









でもそれは、唇ではなかった。







「ふぅ…危なかった。」





私の唇に当たっていたのは


指。






「っ天月お前…！」





睨みを効かせるうらたさんの横で

焦ったように微笑んでいたのは



またもや候補者、天月王子だった。





「ごめんけど、俺もそうやすやすと
奪わせるつもりないんだよね」




「てめっ…！」




「じゃ、姫はもらうねー」




「待てっ！！」






天月さんは

私の手首を掴むと


風の如く走り出した。




「っ……！？」




うらたさんも追いかけて来ようとするが


いつの間にかさっきの鎖が

足に絡まっていて、それは叶わなかった。








・






「お迎えに上がりましたよ、お姫様？」




天月さんはしばらく逃げると、立ち止まり

しゃがんで
私の手の甲にキスをした。




『いや…私はまだ
誰の物にもなりません！』




「ダメだよ
Aは俺の物になるのー！」





スクッと立ち上がり、

私の顎を軽く掴むと
彼もまた、唇を近付けてきた。




っ…ここまで…か

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