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最近の後宮で流行っている噂は

《夜な夜な城壁の上で踊る女の霊》

ここ1ヶ月くらいとても流行っている


この後宮は侵入不可・脱走不可な造りになっている
周りを囲む深い堀にはかつて後宮から出ようとした
妃が沈んでいるらしい

(今回も在り来りな怪談話だろう)

「すみません、薬を見て頂けますか、」
最近は猫姐から調薬を教わっていて、それを
やぶ医官殿に見てもらっている

このやぶ殿は私以上に薬が作れない
私や猫姐に材料を分けてくれるのは嬉しいが
知識は最低限……

(守秘義務は皆無だし)

ただこのやぶ殿は人はいい。ものすごく人がいい


「お茶が入ったよ」
(煎餅だ…!猫姐に持って帰ろう)

「私の分もお願いするよ」
(!! 白茶と月餅だ…!)

月餅や白茶はお偉いさんが来た時にしかやぶ殿は
出さないので、ラッキーである


「お仕事ご苦労」
「いえいえ、それほどでも」

壬氏の顔が若干戸惑っているのは
白茶と月餅の嬉しさでいつもより2割増くらい
口角が上がっているからだろう。

(それにしても…この男どれだけ暇なんだろう
宦官なら内侍省にいるべきではないのかな
どこにも所属せず、
後宮内を監視してまわってる様だし、となると、
とても上の立場の人…になるのか。)

(皇帝の後見人の可能性もあるが、まだ若いし)

(皇帝の愛人か…)

「なにかものすごく失礼な事を考えているように
見えるのだが」

「いえ、そんな事は。」



「……そうだ老師、奥からこれを取ってきてくれ」

(´・ω・`)

(この人最初から最後私に用があったのか)


「で、本題はなんでしょうか」
「幽霊騒ぎは知っているか?」



「………その件に関しては私ではなく
猫姐に相談して頂けますか」

「え、」


さっと席を立って出ていこうとする

「いや、待て待て、急にどうした」
「御無礼は承知です」

「そうじゃない」
「………私は、怪談事と
横暴な殿方が一等苦手でございます」

ですので、と続けようとしたら壬氏が口を挟んだ

「っ、夢遊病というのは?」

「…それなら存じ上げておりますが、
そこの医官殿でも知っている程度です」

「どうやったら治る?」

(猫姐ではなく私に来た理由はそうか
薬以外の知識の豊富さか)

でも夢遊病なら猫姐でも知識はあるから
どっちにしろ一緒だ。

「少なくとも薬で治る病ではありません」

「薬では、というと?」

(面倒くさい)

「そこまでは、」

すっ、と壬氏が私の頬に手を添え微笑む

「善処いたします」

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抹茶タピオカ2号(プロフ) - 全部読ませていただきました!とても面白かったです!( ≧∀≦)ノ (2020年6月19日 13時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
鵜久森(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます!二人の関係はお楽しみですね、笑 (2020年1月1日 23時) (レス) id: b3c4559ac8 (このIDを非表示/違反報告)
鵜久森(プロフ) - 蘭さん» なんと!偶然ですね^^楽しんで頂けたようでなによりです! (2020年1月1日 23時) (レス) id: b3c4559ac8 (このIDを非表示/違反報告)
- 奇跡的に本名とデフォが一生で読みやすかったです!話もとても楽しくて久しぶりに素敵な作品に出会いました! (2019年11月27日 9時) (レス) id: 871a4e4c3f (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 番外編02の壬氏さんがかっこよすぎて死にそうになりました笑 これからの2人の関係が気になります!更新頑張ってください(*'▽') (2019年11月10日 11時) (レス) id: 805e2c1757 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵜久森 | 作成日時:2019年4月14日 17時

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