【TREASURE】【短編】その壁の向こう側 (ページ3)

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しかも、そうなのだ。大所帯のグループに数多くいる弟たちの中で、自分はジュンギュにあまり好かれている方ではないだろうことは、ひしひしと感じていた。

あからさまに態度に出されるとか、そういったことがある訳ではないのだが、どうにも幼い頃からそういう人の機微のようなものを感じ取る能力が高かった。それこそ自分だけが感じることで、他のメンバーから見たらそんなことはないように見えるかもしれないし、もしかしたらジュンギュ自身気づいていないかもしれないけれど。だからドヨンの言葉に驚いたようにジュンギュはドヨンに振り返った。

「なに言ってんの？」
　

そして本当になにを言っているんだと言わんばかりに小さく息を吐き出すようにジュンギュは笑った。

「いいよ、わかってるから。誰だって苦手な相手っているもんだしさ。だから今日だけは我慢して、ジュンギュヒョン。俺も大人しくしてるから。」

　ツインベッドのこちら側、ドヨンはジュンギュに背を向けスーツケースに手をかけた。

しかし不意に肘を引っ張られ、その手はスーツケースにぶつかり、痺れるような痛みが指先から肘そして肩に流れた。しかしその痛みはすぐに、さらなる痛みを持って消えた。くるりと体は反転させられ痺れの走った腕はぎゅっと強く掴まれていたからだ。

そして反射的に上げた視線の先には真っ直ぐにドヨンを見るジュンギュの美しい顔とそれに引けを取らない黒い瞳があった。

「そういうかっこつけたことろが嫌い。俺はなんでもわかってるっていう感じが嫌い。末っ子組末っ子組って言うくせにらしくないところが嫌い。人の気持ちを勝手に慮るところが嫌い。」