ひかる日常 (ybhk) (ページ5)

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意図せずして二人きりになってしまった楽屋。ずっとふたりきりになりたかったけど…いまじゃないんだよ。

俺らの間の沈黙なんて今に始まった話ではないのに、気まずくて。なにか話したいのに気の効いた言葉はなにも出てこない。

なにも言い出せない俺の代わりにこの沈黙を破ったのは薮だった。

｢ひかる｣

｢…ん？｣

｢今日、雄也と飯行くの？｣

少しでも不満に思ってくれてたら、と思いちらっと薮の方みると、薮の視線は携帯に残したまま。
薮の方をみて、そのまま「うん」と返事をしても、「へえ、」と、特に気にしているようすはない。

…なんだその返事。興味ねぇなら聞くなよ。
二人なりたいって思っていたのは俺だけだったのかよ。

なんだか悔しくなって。これ以上二人でいてもイライラしてしまうだけだと考えた俺は、雄也のことは外で待つことにして、上着を羽織り荷物を手にした。そして高木の荷物がここにはないことを確認してドアノブに手をかける。

｢｣

背後から何か話しかけてくる声が聞こえたきがした。でも聞き取れなかった俺はドアノブにかけようとした手を止め、振り返る。

｢なんかいった？｣

｢だから…、サシなの？｣

｢うん。サシ｣

なんで知ってんの、と聞くよりも先。
薮は眉間にシワを寄せ、今度は視線を携帯から放してこちらを見ている。なにか言いたげに尖る唇。

そしてそんな薮を何も言えずに見つめる俺。

薮は眉間のシワをそのままに立ち上がり、のそのそとこちらに近寄って俺の襟ぐりを掴んで引き寄せるとそのまま口付けた。

なんだよ、ここ楽屋だぞ。離せよって言いたいのに
久しぶりの体温に溺れて何も言えないどころか振り払う事も、拒む振りをすることすらもできない。突然のことにうまく息を吸えず、思わず口を開くと、調子に乗った薮が俺の口内に舌を潜り込ませる。

んん、―

久しぶりの薮からのキスは気持ちよくて、我慢できず甘い声が漏れた。

苦しくなって、胸を叩くと静かに顔が離れる。襟を掴んでいた手も解かれ、脱力した俺は床に座り込んだ。

…もっと、もっと薮がほしい。

言わなくても伝わるように、欲に濡れているであろう目の熱はあえて隠さずに薮の言葉を待つ。
お願い、あの日のようにこのまま連れて帰って。