２ ページ2
.
２人の間に会話がなくても、不思議と気まずくならないこの空気が好きだ。お互いが好きなことをする。光は食後の一服をして、俺はそんな光を後ろから抱きしめる。
「でも、光の身体が冷えちゃうのは嫌だからこうしてよっか？」
昔に比べたら、いくらか甘えてくれるようになった光だけど。いつもの光なら、突き放すか、悪態をつくと思ったんだけどな。
意外にも俺の腕の中に静かに収まったままの光はもうすでに煙草の火を消していた。
「……月が綺麗だね、」
「ん。そーだな」
腕の中の光が、大げさに夜空を仰いでそういった。俺もつられて顔を上げる。
夜空にはまん丸の月が空に浮かんでいる。いつもよりも大きく、いつもよりも近くに見えるそれを見て、俺も素直に綺麗だなぁと思った。それなのに。
「…やぶ、意味知らない？」
街を行く車のエンジン音で消えてしまいそうなくらい小さな声で光はつぶやく。
「え？」
「月が綺麗ですね。って、意味…知らない？」
「なんのことだよ。満月は綺麗だよな？」
腕の中に収まったまま振り返るように、ちらりとこちらをみる光は可愛い。でも今日はもう少しだけ頑張ってよ。
「もうっ …！」
何か言いたそうに、でも言い出せない様子の光は、唇をとがらせ俯く。
結局今日も光は照れには勝てなかったらしい。
「寒いし、先入るねっ」
なんて、俺の手を解きムードをぶち壊して室内に戻ろうとした。
いつもは素直になれない光なりに頑張って伝えようとしてくれたんでしょう？
その言葉の意味、俺が知らないわけなんてないじゃない。
俺は、ベランダの窓に手をかけた光の手を引いて、もう一度光を腕の中に収めた。
俺は真っ直ぐに伝えるから、ちゃんと聞いていて。
「光、俺”も”愛してるよ」
✳月夜に愛言葉。
”…おれ「も」？”
”だって、愛してるって言いたかったんでしょ？”
”もう！やっぱり知ってたんじゃん！！”
”俺はちゃんと愛してるって言葉を聞きたかったから”
”……っあいしてる！”
”おまえ、やっぱかわいいなー！！”
”うるさい！やぶきらい！！”
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ササキ | 作成日時：2018年1月20日 18時
