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二十九食目 ページ30

「伊黒、さん…?」



食堂の中へ入ると、奥の方でガタッと音がした。






見れば、椅子から立ち上がる水戸村の姿。


涙を流していたのだろう、その目は赤く腫れていた。





よろよろとした足取りで俺の元へと近付いてくるソイツに走り寄って、


倒れかかって来た所を抱き留めた。





「何、してる…ッ!」


途切れ途切れにそう聞けば、水戸村は恥ずかしそうに目を逸らして、「待ってたんです」と言う。




「お前は馬鹿なのかッ?!



夜通しココに居たんだろう、何故そんな事を!」



「伊黒さんが、来るって思ってたから」



「ッ!」



「あはは、めちゃくちゃ驚いてるじゃないですか、伊黒さんらしくない」




落ち着いてくださいよ、といつもの調子で笑って、俺の背中をトントンと叩く水戸村。




溢れ出す想いが止まらず、水戸村を更に抱き寄せた。





「お前はとんだ馬鹿野郎だ…っ、」



「伊黒さ、」



「俺はアレだけ酷いことを言ったのに、何故お前は……ッ」





背中を優しく叩いていた水戸村の手が止まる。






「嫌いになんか、なりませんよ」





「!」








その水戸村の言葉が、ストンと胸に入って来る。






「私が嫌々伊黒さんにおにぎりを握ってると思いました?


頼まれたからしょうがなく作ってるって、思ったんでしょ?





私は、伊黒さんに料理作るの、凄く好きなんです。



いっつも、ご飯粒一つ残さず綺麗に食べてくれてるのが、すごく嬉しくて…






だから、


嫌いになんてならないから









泣かないで、伊黒さん」





「っ、」



そこで初めて、目の前が霞んでいることに気付いた。







「泣いてなど、いない…ッ」



「嘘つけ、バレバレなんですよ」





本当に今日どうしちゃったんですか?と笑いながら茶化す水戸村の肩に、顔を埋めた。









「…ありがとう、」



「こちらこそ」







そう言って食堂の片隅で小さく笑い合ったのは、





二人だけの秘密だ。

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ニンニク - emiさん» このシリーズ好きなんですよ! (2020年4月30日 19時) (レス) id: c0f99f9f3e (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ニンニクさん» 鼻からケチャップw お気を確かに!!笑笑 ありがとうございます!! (2020年4月25日 8時) (レス) id: 99f895e5d1 (このIDを非表示/違反報告)
ニンニク - emiさん» 楽しみに待ってます♪伊黒さんかっこよすぎて鼻からケチャップが・・・ (2020年4月24日 22時) (レス) id: c0f99f9f3e (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ニンニクさん» 本当ですか!嬉しいです!そんなことを言っていただけて光栄です!伊黒さん素敵ですよね!頑張ります!!コメントありがとうございます!! (2020年4月22日 10時) (レス) id: 99f895e5d1 (このIDを非表示/違反報告)
ニンニク - このシリーズめっちゃ好きなんです!伊黒さんおしなので、更新されてるとすごい嬉しくなります!これからも頑張ってください! (2020年4月21日 23時) (レス) id: c0f99f9f3e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:emi | 作成日時:2020年3月10日 22時

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