第1話 ページ1
*
「Aさん、」
とある春の日の、眠くなるような暖かなひだまりの下。
久しぶりの七海さんとのお出かけで、小さな路地裏のカフェにてお茶をしている時だった。
ふと名前を呼ばれたものだから、夢中になっていたバウムクーヘンから目を離して、七海さんの方を見る。
いつも以上に真剣な顔だったから、なんだか可笑しくなってふ、と口元が緩みかけたその時、彼は口を開いた。
「同棲、しませんか。」
ぽとり、とバウムクーヘンの欠片がフォークから真っ白なお皿へと落ちる。
「……へ？」
次に私の口から出たのは、頬張ったバウムクーヘンの隙間から漏れたその間抜けな一言だけだった。
突然七海さんの口から出て来た思いもよらない漢字二文字におろおろしてしまう。
え、ドウセイ…？ってあの同棲だよね。
いやもしかしたら聞き間違い？
そんな、一人で悶々と考え込んでいる私に、七海さんは視線をずらして恥ずかしそうに小さな声で言い聞かせた。
「もう、五年経ちましたし、そろそろいい頃合いかと思いまして、…」
珍しくしどろもどろになりながら喋る七海さん。
…そっか、もう五年も経ったんだ。
そんな彼の言葉に、私は少しだけ昔のことを思い出す。
初めてあったのは、七海さんがまだうちの会社で働いてる時で、私はそこで七海さんの直属の後輩として働いていた。
七海さんと一緒に営業先を回ったり、それが終わったら一緒にご飯を食べたり。
七海さん、あの時から厳しい人だったなあ。
なのに、あんなに厳しかった七海さんから「付き合って欲しい」と言われて、
了承した次の日には彼は会社を辞めていて。
どうしてなのか分からないし、彼が今どんな仕事に就いているかも分からないけれど、私は彼のその言葉が『離れても側に居たい』と言ってくれている気がして嬉しかった。
付き合い始めても常にキッチリした姿勢を崩さない七海さん。
そんな七海さんが、私は大好きで。
気が付けばいつの間にか五年もの間、手も出されぬままのんびりと交際してきた。
そんな彼が五年間で初めて私に見せたその願いに、何だか嬉しくなってしまう。
気が付けば頬はゆるゆると緩み切ってしまった。
「A、さん？」
「…もちろん、もちろん良いに決まってるじゃないですか！」
「！」
不安そうな七海さんの表情が安心したように緩む。
そんな七海さんの優しい笑顔に、心が暖かくなったのだった。
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森 - ↓なな…なんと… (2022年2月24日 23時) (
レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - 森さん» 森様、てぇてぇ頂きました！笑 お察しの通り最後のシーンはハロウィンの直前でございます…これからの二人のことはご想像にお任せ致します… (2022年2月21日 12時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
森 - てぇてぇな〜‼ ところで、これは2018年でしょうか？(ハロウィンもあっちゃったりしちゃいます？) (2022年2月19日 1時) (レス) @page3 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - emiさん» ひぇ、、なんと……（震」 (2022年1月27日 18時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - たろ。さん» たろ。様、コメントありがとうございます！何だかんだ五条先生は後輩思いだよなという私の解釈を盛り込ませていただきました笑 実はこのお話の後、あのハロウィンが来てしまうのです……(ﾄﾗｳﾏ) (2022年1月27日 17時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emi | 作成日時：2021年3月3日 6時
