. ページ7
*
あれから一月が経った。
何となく、推測だけれど、彼が何故遺書を書くのかが分かった気がする。
何度も煉獄さんというその人に会う度に、私は彼の手の傷に気が付いた。
木の幹のような、ゴツゴツとした逞しい手。
そこには、沢山の傷が刻まれていて
おおよそ、20歳前後の男性が持つような手のひらではなかった。
それに、手紙の内容。
あまり深入りはしないのが私の方針なのだが、こうまで毎日同じ内容を書いていると覚えてしまう。
『どうかこれからもご武運を祈る』
こんな言葉を、街の商人が使うだろうか?
何処かの店の跡継ぎが、こんな言葉回しをするだろうか。
「きっと危険なお仕事なんだろうな…」
そんな誰も聞いていない呟きは、店の壁に吸い込まれていった。
今日は、例の彼は来ないみたいだ。
私は背伸びをして、暖簾を店の奥へと下げた。
304人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時